ICPF -情報通信政策フォーラム- / 過去のセミナー

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このページでは、情報通信政策フォーラムICPFがNPO化される以前に開催した全24回のセミナーの概要およびレポートを掲載しています。閲覧したい回のタイトルをクリックすることで全文が表示されます。
尚、8回、10回~17回は概要のみの掲載となっております。

第1回「長野県栄村にみる通信と放送の融合」

概要

 長野県の山間部にある栄村で、全国の放送関係者の注目する実験が行われています。地上波のテレビ放送をADSLで再送信し、家庭のテレビやパソコンで見られるようにするものです。栄村では、民放4局を見られる家庭が約1割と難視聴世帯が多いため、民放の番組をIP配信しているのです。画質的にも、普通のテレビと変わりはありません。
しかし、この実験の商用化はできません。テレビ局が地上波番組のIP配信を認めないからです。これを認めたら、栄村だけではなく、全国にADSLで番組が配信でき、現在の県域免許制が崩れてしまう「蟻の一穴」となることを恐れているのです。今回は、この実験を行ってこられた佐藤さんをまねき、その現状を紹介するとともに「通信と放送の融合」はどうすれば実現するのか、を考えます。

講師:佐藤千明(長野県協同電算ネットワーク部長)
司会:林紘一郎(情報セキュリティ大学院大学副学長)
日時:4月21日(木)19:00-21:00
場所:東洋大学白山キャンパス 5号館5202教室
東京都文京区白山5-28-20
   地下鉄三田線「白山」駅から徒歩5分
   地下鉄南北線「本駒込」駅から徒歩5分
   地下鉄千代田線「千駄木」駅から徒歩15分
入場料:無料

レポート

IP放送の実験経過

栄村は、面積は広いが、民放4局のうち2つしか映らない難視聴地域である。NHKはアンテナ(ミニサテライト)を作り対応している。民放2局は、一箇所だけアンテナを立てることによって8割ほどが見ることが出来ようになっている。その他2つはほとんど入らない。

問題解決のために、総務省より一年間の資金助成を受けてIPテレビ放送の実験を開始。その後単独で実験を続ける。村の中に有線放送があり、その上に載せたADSLの回線網を使ってローカルの4つの放送をIPマルチキャスト方式で配信している。動画エンコード形式は、WindowsMedia9形式。480×480、30フレームくらいの品質。帯域は1.3Mbpsで配信している(最大4~10Mbpsで配信可能、非常にいい回線品質)。当初は専用のセットトップボックス(STB)を使っており、画質はそのSTBの性能に合わせたもの。

元の映像は、村内で放送電波を受信可能な場所を探し電波を受信、受信した動画をWM9形式にエンコードする。それを村内光ファイバ網で栄村の有線本局に送信。マルチキャストの配信用サーバからお客様に届ける。ADSLの先に専用ボックスを置き、ビデオ信号に変えてテレビを見る。現在はSTBだけでなく、ADSL回線に接続しているパソコンでも視聴可能。

当初の実験後、村内から長野市内に受信サーバ設置場所を移し、そこでエンコードして、中継網を通して配信する形式に。県外には出ていないが、村外で受信し、村に送るという状態。マルチキャストのデータはJANIS中継網を利用し栄村へ配信される。同時に配信サーバを栄村のみに限定することで他地域への流出を防いでいる。

法律上の課題

電波を受けてエンコードしてマルチキャストサーバに送信するところまでは放送事業者。その後、送信されたものを、ルータを介しネットワークで視聴者に配信するのが通信事業者。マルチキャスト配信は通信事業者のサービスを使った放送事業者のサービスである。

通信事業者があって、その通信役務を利用する放送組織体があり、そこが放送するというスキームにもっていきたい。事業化前に考えなければならない問題は、放送法と著作権法との関連。一つの通信に対して、試験放送でありかつ4Mbps以下である場合は電気通信役務利用放送法の適用除外。
本実験では1.3Mbpsなので問題なし。著作権上からも営利を目的としていない、かつ無料なので問題なし。

しかし、本実験が著作権上の放送区分の内、有線放送に該当するか自動公衆送信に該当するのかが争点となる。事業化後は村が電気通信事業者になり、そのうえでADSLを使った通信事業者をおく。さらにIP放送する放送事業者が必要となる。著作権では、営利目的となるので著作権処理が必要になる。実演家やレコード原作者に対しては、従来の放送と同様に著作権処理は必要ないと解釈される。放送されているものを有線放送する場合は2重に払う必要が無いためである。ただし、文芸家協会や脚本家連盟、シナリオ協会、日本音楽著作権協会(JASRAC)などに対しては処理が必要。

また、放送事業者との間には再送信に対する著作隣接権に関する処理が必要。マルチキャストが電気通信役務利用放送法上の放送に該当するかという問題。総務省はあいまいな対応で、民放の同意が無ければ総務省としては判断しないと見受けられる。

この問題が技術的、制度的に総務省が定義する通信役務利用放送に該当するかの判断を総務省に求めた。特区として申請したときの判断は否定しないということだった。しかし、栄村の事例を具体的に提示したところ、「判断情報が不足していて回答できない。」「民放と協議してほしい」と曖昧な態度に終始。

問題提起:合法化のために

地上波の放送を持ってくる場合はコンテンツホルダーの同意が必要だが、自分で権利処理しているものを流す、それをどういう仕掛けで流すかという事のほうが、役務放送に該当するかどうかの判断材料のはず。IPマルチキャストは同一内容を同時に送るのだから著作権上は有線放送である。

IPマルチキャストは著作権法上の有線放送だからJASRACとは契約の必要がない。実験期間中に村が無料で有線放送する場合にも許諾契約はいらない。事業化後の民放との権利処理の問題とJASRACの持っている音楽の権利の問題は別個に解決すべき問題であるが、JASRACは「民放の許諾を受けてほしい」などと意味不明な曖昧な態度に終始。

文化庁は、この問題に触れたくないのが本音であると考えられる。IPマルチキャスト方式が著作権法上、有線放送かどうか放送事業者と議論をするにしても、民放、権利保持者の同意を得てやればいいのではないかというスタンス。明確に判断はしない。問題があった場合は裁判所の判断の姿勢に終始。

民放は、当初は総務省が放送とすれば同意の可能性もあったが、総務省が放送と判断しないので同意しないというスタンス。放送と判断したならば権利処理が必要になる。地方局だけで解決できる問題ではなくキー局がどう考えるかに全てかかってくる。

しかし、民放はIPマルチキャスト方式では番組再加工の可能性への懸念・配信される映像の品質・同一性保持が困難などと難癖をつけ、交渉に応じない。民放の懸念している問題は現在の状況からみても全くの杞憂である。自分たちが果たすべきことを棚上げにし権利ばかり主張している。

ディスカッション

法律問題

(林コメント) 「地上波とは」という問題が原点。日本では地上波がユニバーサルサービスとなっており行政もそう考えている。そのためケーブルテレビは最後の手段である。地上波でエンドユーザーまで行かなければならないところをカバーしているだけ。ケーブルをもう少し前から育てていれば、アメリカのように地上波で流しているものをケーブルで流すという契約を義務付ければこれらの問題を解決することが出来る。

Q. 通信と放送の融合については、通信と放送は融合しない。一つは著作権処理が出来ない。もう一つはコンテンツ規制を課すのが放送であり、秘密を守るのが通信である。その為、簡単には融合しない。著作権法と放送法で法律的に解釈すると免許的には放送であっても著作権法では自動的に放送となるわけではない。

問題はキー局。そこを攻め落とさないとこの問題は解決しない。しかしながら著作権問題は「触れられない問題」である。長野県内のCATVで仮にマルチキャストの技術を採用させたら、放送として認めるのだろうか。県内で、FTTHでやっているところはある。そこがIPに乗り換える、というのならば可能性はあるが現実的ではない。

Q. ヤフーのBBTVも同じく地上波を再送信できない。その理由がいまひとつ理解できない。

BBTVは従来型の有線放送の免許とは違う通信役務利用放送。そのため再送信できない。ヤフーのBBTVの場合は圏域外に流れる可能性があるから。民放が嫌がる理由はそこで、エリア外に流されるのは困ると主張する。

今日の話と全く同じことがソフトバンクでも起こっている。域内であるとかないとかという問題は別の話で、キー局が抵抗する理由は著作権。系列キー局が怖いのはスポンサーなのだから、経団連の名前でもなんでもいいからバックをつけるというのは。

放送ビジネスのあり方

Q. 打開策の一つはwin-winのプロセスを作ることが重要。最大の障害はキー局であり、栄村とキー局とのwin-winの関係を築く意思は出したのか?

交渉はしたが、ジョイントすることによるメリットなどは提案していない。放送の権益が閉鎖的であることが問題だ。放送局が通信を使って放送を出来る仕組みを考えて欲しい。放送事業者は通信事業者が放送をやるようになる事が怖い。それでいて自分たち放送事業者が通信を出来るようになるという可能性についてはあまり探求しない。

Q. 放送事業者もIPで収入を得るようになればwin-winの関係に近いことが出来るのではないか。

放送はビジネスモデルで言えば垂直統合の典型である。電波と免許の2重の障壁で守られている。そこで穴が開くのはそこにいる人にとっては非常に脅威である。どこに穴が開くと困るかは著作権で、そこが一番儲かっているから。今回の場合はIPでなくては駄目という環境ではなかったが、せっかくの機会なのでNHKの感触を見た。前向きな回答を期待したが非常に慎重な態度であった。

地上デジタル放送との関係

Q. 栄村にデジタルを届ける場合はどのくらいかかるのか。

鉄塔を建てなければならないので何千万円と必要になる。民放はやる気は無い。今のアナログの難視聴以上に、解消する余裕はない。今は顕在化していないがデジタル放送の難視聴対策はこれからである。この問題は山間地だけでなく都心の真中でもビル影によって起こりうる問題。それを救済するためにケーブルテレビがあるが、どうせ引くなら同軸よりも光を引きたがる。それが何故使えないのか?それはIPだから駄目であって、放送だから別回線を引いてくれと。波長を分けるような仕掛けを入れろ。等々、この難視聴の問題が今後クローズアップされてくると思われる。

社会的に認められて民放の立場が悪くなって世間的に同意せざるを得なくなるという持久戦だと思っている。全国の同じような地区も問題を抱えている。東京のど真ん中でも同じような危険性をはらんでいる。民放は公共性を持って責任をもてるのかという世論形成をしていくことによってジワジワ攻めていく。他の地域でも同じことが起こりうるということを前提に盛り上げていくことが必要ではないか

栄村での事業化

Q.事業化と講演したが、こういったことをやるにはコストがかかるがコストを補うための収入は見込めるのか?

事業化した場合、それは放送事業団体が行えばよい。そこが投資する金額とユーザーからいくら貰うか、という事業モデルになる。ユーザーからするとインターネットサービスに払うお金にどのくらいまでだったら上乗せするか、という事になる。それは数百円ならば可能だろう。

Q.村の助成でNPOがやるのはどうか(ケーブルテレビの難視聴はユーザーからお金を取ってないですよね)。

運営コストはそれほど必要ない。

Q.放送番組を放送するためにはお金を払わなくてもよいけれど、設備を維持するのにお金を集める。そのようなときにも、JASRACなどには村民から集めた何パーセントかを払わなくてはならないのか?

維持費として集めたお金から何パーセントかを払うということになる。本来なら再送信同意を得た段階でJASRACに直接払う必要は無いはずだが。

従来のケーブルテレビと同じスキームで払うようにすればCATVだろうがIPだろうが同じになるはず。BBTVはそれを要求してケーブルテレビ連盟に入ろうとした。権利処理がクリア出来るから。しかしケーブルテレビ連盟には入れていない。

韓国は勝手にIPでやって、利益が出たら放送局と話し合いましょうと。今のところ利益は出てない。

Q. 村のユーザー数はどのくらいか。

人口は1000人ほどで、ADSL契約している人は約200人。その中でSTBを使っている方が20人ほど。

Q. 村の明確な意思表示はあるのか。

この実験は村の名前でやっている。村長は裁判でもなんでもやると言っている。

第2回「ハードディスク録画サービスと著作権」

概要

昨年10月、「録画ネット」という会社に業務停止を命じる仮処分が東京地裁で言い渡されました。この会社は海外在住の日本人向けに、日本のテレビ番組を録画できるパソコンを売り、それを自社内に置いて海外から操作できるようにする「ハウジング・サービス」を行っていたのですが、それに対してNHKと在京キー局5社が、サービスの差し止めを求め、裁判所が認めたのです。
録画ネットのユーザーは、わずか250人。こんな「すきま商売」をテレビ局がそろって訴えるのは、同様の録画代行サービスが国内でも広がることを恐れているためです。しかし業者は、インターネット経由で録画の操作をしているのはユーザーであり、著作権は侵害していないと主張しています。
ハードディスクとブロードバンドが普及した今日、それを利用した便利なサービスが登場していますが、著作権上の紛争も引き起こしています。どこまでが合法なのか、また制度を見直す必要はないのか、いくつかのケースをもとに考えます。

講師:原田昌信(エフエービジョン取締役)
モデレーター:真野浩(ルート株式会社 社長)
日時:5月19日19:00~21:00
場所:東洋大学白山キャンパス 5号館5202教室
東京都文京区白山5-28-20
   地下鉄三田線「白山」駅から徒歩5分
   地下鉄南北線「本駒込」駅から徒歩5分
   地下鉄千代田線「千駄木」駅から徒歩15分
入場料:2000円
    ICPF会員は無料(会場で入会できます)

レポート

「ハードディスク録画サービスと著作権」

録画ネットのしくみ

録画ネットとは海外に住んでいる日本人を主なターゲットにして、テレビチューナー付きのパソコンを買ってもらいそれをハウジングセンターで預かるというサービス。お客一人当たり一台のパソコンを用意する。ユーザーはネット経由でハウジングセンターの自分のパソコンにログインして、録画予約を行う。録画し終わるとネット経由で海外の自宅で再生する。テレビを見る以外にも自分のサーバーとしてコンテンツをおくことも出来る。コンピューターに弱い人や、海外に滞在する人に代わってパソコンを管理する。海外在住で日本にパソコンを置いておくことが出来ない人向けのサービス。

ログインすることによって録画ネットのユーザーかどうかを確認している。1つのIDで多重ログインされたりすると預かっているコンピューターが違法コピーの温床になる可能性があるのでユーザーの確認を行っている。

サービス差し止めに至った流れ

2003年10月ごろ、日本国内で受信機を設置したら受信料を払わなければならないためNHKに受信料について交渉をするが受け取る段階で拒否される。HNKの弁護士と春日氏とで話し合いが持たれる。NHKに受信料を受け取らない理由を尋ねるもしっかりとした答えは返ってこない。

2004年6月、サービス停止を求める郵便が送られてくる。何が問題なのかを尋ねても返答は得られず仮処分の申し立てが行われる。
8月13日、審尋、答弁書提出。
10月7日、仮処分決定。録画ネットがテレビの放送を録画している、複製している主体であり、録画ネットが行っているのは録画代行である。
12月28日、異議申し立て、保全申し立て
2月18日、異議申し立てに対して答弁書
裁判所からテレビ局側はどこまでが白でどこまでが黒なのか、録画ネットはどこが変わったのか具体的に詳しく説明せよとの指示。その変化の程度と放送局が主張する違法合法のボーダーを裁判所が判断すると説明。
3月17日、質問に対する返事を出し、23日、放送局側も返答。
4月11日、二回目審尋。裁判官が変わり、いつ結果が出るかわからないという状況に。
現在、サービスは決定が出た時点で放送局の録画の対象としてはいけないと書かれていたためアンテナを外す。マシン自体はデータ保存として使っている人がいるためそのままになっている。

放送局の主張

複製に用いる装置(TVパソコン等)を録画ネットが用意している。TVパソコンを管理、支配している。アンテナを接続することにより、コンテンツを供給している。操作方法などを解説している。録画ネットは利益を得ている = 録画の主体は録画ネットであると主張。顧客の行為は違法である(パソコンは「公衆の用に供する自動複製装置」)。「インターネットを通じて録画予約、録画が出来る機器を事業者が継続的な直接占有下で管理する」ビジネスは全て録画の主体は事業者であり、違法。

録画ネットの主張

録画ネットのサービスはハウジングサービスである。預かっているパソコンは「公衆」向けではない。零細なクライアントサーバーシステムの寄せ集めであり複製工場ではない。インターネットの発達により私的領域が広がっていると考えられる。「ログイン」を必要とする領域は私的領域。顧客の行為は適法であり、ハウジングサービスも適法である。パソコンは物理的管理が管理の全てではない。本サービスはカラオケ法理を当てはめるべき事例ではない。コンテンツはアンテナ以外からも入ってくる。放送局側の「損害」がまったく不明確。パソコンを設置できる場所を持たない者のみが不利益を被るのは不当。

裁判所の判断

管理・支配の程度から録画しているのは録画ネットであり、録画代行である。機器類は録画ネットが調達している。事務所内に設置している。適切に稼動するよう管理している。TVパソコン以外は録画ネットが所有している。利用者は録画ネットが用意したパソコンしか購入できない。TVパソコンのみの販売には応じていない。設置場所は録画ネットの事務所内のみである。各TVパソコンの内部のハードディスクにファイルとして保存される。TVパソコンには録画ネット製作の共通のソフトがインストールされている。操作できる内容はインストールされたソフトに規定されたもののみである。パソコン返却時にハードディスクが初期化される。

ディスカッション

地域性の問題

Q. 論点がいくつかある。私的利用の範囲なのか。著作権を損なっていないのではないのか。放送の権利、地域性の侵害が大きな問題になるのではないか。

A. オリンピックやワールドカップの前になるという話はあながち笑い話ではなく、NHKと受信料の支払いなどについて話し合っていたが、受け取りの段階で拒否され、2004年6月になって急に「オリンピックが始まるから困る」とNHKから連絡があった。その後サービス停止を求める内容証明郵便が送られてきた。

私的利用の範囲について

Q. 身内が海外にいる場合などの私的コピーの範囲についての判断はなされているのか。

A. 抽象的な判断はされていない。しかし、例えば親が日本のテレビ番組を録画してそれを自分の子供に(テープなどを)送るのは本来ならば違法だとテレビ局は主張している。

Q. 私的利用の範囲は技術の発展によって広がっていく事は否定できないと裁判官は言っているのだから、そういう意味では認めているのでは。

A. 違法か、合法かを議論しても仕方がない。それはIPマルチキャストが違法か合法かを議論しても結局判断するのは裁判所であり、今回も私的コピーかどうかを判断するのは裁判所。

Q. 事業者でなければ問題ではないのか?

A. 事業者かどうかというよりは、金が動くと問題になる。win-winの関係とかそういう問題ではなく、放送局は全部自分たちが取りたいそういうスタンスでいると思う。

Q. 技術的にインターネット越しに放送が見られるようになり、装置が沢山出てきて、インフラという観点からしても何らかの形で助けを得ないと情報通信の良さを享受できない。ところがテクノロジーや通信法や電波法とかの側面とは別に放送に関して言えば著作権・地域放送権がネックとなっている。

クロムサイズの事例

Q. 選撮見録(よりどりみどり)のサービスはどのようなものか?

クロムサイズ 寺田:選撮見録(よりどりみどり)が録画ネットと大きく異なるのはサービスではなく、あくまでシステム販売であるという点。また、マンション内のLANなので、インターネットではない。マンションの中にサーバーを設置し、一つのサーバーに対して最大50クライアント。管理人室やMDFに設置、ユーザーの部屋にセットトップボックスを置くという構成。ユーザーは、リモコンで操作で個々に録画した番組を閲覧できる。ユーザーは個々に先ず録画予約をしなければならない。全局録画モードというものもあるが、これも同様に、ユーザーの先行録画により録画されるものである。放送各局からは、私的録画の範囲を超えているという訴訟を起こされているが、我々はあくまで、ユーザーによる私的利用範囲内であると考えている。

原田:放送局はスポンサーがどういうコマーシャルを打つのかを提供したいがために、こういったサービスを潰そうとしているのか

寺田:放送局側はそのような主張まではしていない。単に、私的利用を超えてい
るといわれているが、著作権法のどこに抵触しているのかまでは言及していない。
販売差し止めを要求はされているが、導入済みのユーザーについては、損害賠償
対象にはしないと言っている。

ユーザーの権利と主張について

Q. 法整備が追いついていないからこういった問題が起こるのか、それ以外に既得権益、利益の取り合いが問題なのか。ユーザー側からの権利の主張という可能性があるのではないか。

A. 財産権という意味でも、買ったものでも自由に利用・使用できる。なんでこういった使い方が出来ないのかという主張はある。

Q. もともとの法律の趣旨の創作者にインセンティブを、一方で文化の向上のためアウトプットをというバランス論がどこかにあると考えるべきだ。経済学で言えば情報占有できない。占有できない以上権利を排他的に与え続けるのは無理。どちらかと言うと特許権が良く出来ていて著作権は特許権に合わせる努力をしてこなかったというところが基本的な問題ではないか。

A. もし放送局が主張することが本当なら録画ネットはサービスをやめる。オリンピックの放送権が高騰して日本が放送権を買えずに日本国民がオリンピックを見られなくなったら日本にとってマイナスだからやめると。でもそこまで話が進まない。放送局に金を払えばいいのかと言ってもそれには応じない。商売やめろの一点張り。

Q. これが違法なら、ウェブ・ホスティングなどもみんな違法になる。インターネット以前のテクノロジーに対してではなくて、インターネットに合わせた権利の体系を考えることがまともな論理ではないのか。

A. 我々としてはWin-winを受け入れるなら喜んでという姿勢。海外長期出張の人たちに見てもらえるなら絶対にマイナスにはならないはず。スポンサーにとっても放送局にとってもプラスだろうと考えている。本来なら放送局がやるべきだ。ジャスラックなんかは著作物が流れているからISPから利用料からある一定額を取るという話をしている。推進協議会としてなにかアクションはないのか。

原:消費者の利益がないがしろにされている。

真野:そこを喚起するのがICPFの役割だが、放送の権利、著作権に関して、制度設計をどう主張していくべきなのだろうか。

池田:つきつめると立法論になってしまうのではないか。もし放送局の主張がそのまま通るようなことがあれば、世の中のホスティング・サービスが全部ひっかかって、立法論の見直しにきっかけになる可能性もある。

真野:日本国内だけでなく海外連携、地域放映権として国内議論だけでは不十分ではないだろうか。

第3回「テレビ局側から見た通信と放送の融合」

概要

第1回と第2回のセミナーでは、通信と放送の融合が技術的に可能になっているにもかかわらず、制度的な障害のためにテレビ番組のIP配信が自由にできない現状が明らかになりました。最大の障害は、著作権の問題です。とくに、これまでの議論では、テレビ局が番組の再配信を許可しないことに批判が集中しました。

新しい技術の発展を阻害することは、テレビ局にとっても好ましいこととは思えませんが、彼らの本当のねらいはどこにあるのでしょうか?また、どうすればこうした障害を乗り越えて、通信と放送の融合した新しいメディアは可能になるのでしょうか?今回は、放送業界にくわしい吉井さんにテレビ局の考え方を解説していただき、政策提言の方向を考えます。

講師:吉井勇(月刊『NEW MEDIA』編集長)
モデレーター:池田信夫(ICPF事務局長)

日時:6月16日(木)19:00~21:00
場所:東洋大学白山キャンパス 5号館5202教室
東京都文京区白山5-28-20
   地下鉄三田線「白山」駅から徒歩5分
   地下鉄南北線「本駒込」駅から徒歩5分
入場料:2000円
    ICPF会員は無料(会場で入会できます)

申し込みはinfo@icpf.jpまで電子メールで

レポート

第3回ICPFセミナー 「テレビ局側から見た通信と放送の融合」
吉井勇(月刊『NEW MEDIA』編集長)

テレビの視聴スタイル

テレビ放送50年の中で、視聴スタイルに影響を与えたのは、1975年に登場したVTR、1976年の赤外線リモコン。これらによってタイムシフト・ザッピングのツールが出てくる。1980年代以降、高視聴率番組が減少。こうしてテレビの見方が、視聴率が変わる。つまりツールが変わると視聴形態が変わってきている。

デジタル放送とコピー規制

コピーワンス。デジタル放送では受信したデータをそのままパソコンに入れられるということで、BSデジタル開始直後のときに、SMAPの番組がオークションに出された事が契機となり、著作権管理をしないと番組を提供してもらえない事態になり、コピーワンスのコントロールが整ってきた。一回だけは録画ができるが他の媒体に移すときはデジタルのままではできない。いろいろ録って、編集して、全部を保存しておくという発想ができない、全録文化への挑戦である。

タイムシフトによって、CMを見ないというCM飛ばし問題がある。これはVTRができたころから一貫して言われてきたことで、ビデオリサーチに言わせると、常に指摘されてきたことだ。ただ、HDDによって録画視聴が中心になってくるという技術面の進化は想定に無かった。

多様な視聴スタイルは変化している。

PCで見ている人も多いのではないかと思う。視聴のメディアも変わってきているし、当然、テレビを見ながらネットを見るというダブルウインドウ、マルチウィンドというような見方の変化がある。

地上デジタルになると1セグ放送、車の中で安定してみることのできる技術があるが、これらは額面どおりエリアの隅々まで本当に使えるのか? 衛星電波によるモバイル放送の「モバHO」を借りてみたことがあるが、画面が小さいこともあって画質面はきれい。しかし、見ている途中で切れる。アナログ放送みたいに乱れていけば許せるが、デジタルは突然切れるから冷たい。

NHKは受信料がある。受信機に対して受信料という構造だが、携帯電話受信の受信料はどうするのか? 答えが出てない問題がたくさんある。

視聴のスタイル・サービスが変わるから、そこの議論を詰めていかなくてはならない。サーバー型になればCM飛ばしは当たり前になるのではないか。リアルタイムで観ないということになると、当然民放はいやがる

Q.サーバー型放送の定義とは

A.家庭の中でホームサーバーを用意し、放送と通信つまりネットワークから入ってくるものをCASで管理している状態。4年前までNHKの技研でコンテンツは放送だけを分けて見せていた。3年前から、ネットワークから流れてくるコンテンツと、放送のコンテンツは一緒に家庭の中に届いてくるというのをNHKも大きな流れとして見ている。

Q.それだったら、ライセンス式でCMスキップができなくしたら?

A.ありますね

Q.それを狙っているのでは?

A.9月くらいに規程が作られるので是非そのときに調べてください。

ホームネットワークの時に言われるのがDTCP /IPの検討。家庭にある複数台のテレビを、どこの部屋でもサーバーに蓄積した番組を家庭で自由に見られるようにする。ホームネットワークの中だけでコントロールできるもの(DTCP/IP)をつくりましょうというという動きがある。

Q.ながら視聴も重要な要素であると思うが、メディアは気にしていないか?

A.クライアント側(広告主)が気にしているところはそこ。以前は、CM1本の放映時間はもっと長かった。そもそも民放は、放送時間の18%をCM時間として、全部CMにするのは公共性からだめじゃないかということで自主規制している。収入を上げるためには、1本あたりのCM枠を細かくして、価格のアップを図ってきた。広告主としては、スポットCMが番組が終わったあとでしっかりと見てもらえているのかということになる。広告主側は、あれだけの値段払って、本当に見てもらえているのか、という確証が無いのではないかと主張している。広告主が集まる広告主協の電波委員長だった資生堂の大竹氏(昨年9月に亡くなった)はビデオリサーチの数字だけではなくて、ネットで「どう見られているか」というアンケート調査で実態把握をしようとしていた。このままでは株主訴訟の対象になるかもしれなという意味では、広告の効果の測定の仕方、メディアのコンディションの把握の仕方でいいのか? また、ダブルウインドウの問題、テレビを見ながらパソコンを見ているということでいろいろな相乗効果、シナジー効果がある。

再送信

総務省の発表によれば、マンションのような共同住宅内のケーブル配信を含めて、なんらかのケーブル経由でTVを観ている世帯は再送信だけ含めて五割強。アンテナだけは世帯数では半分ぐらいであるというのが現状。

CATVの再送信について、放送局は区域外の再送信を次のように考えている。地デジでの再送信の原則で言えば、1)再送信同意が原則2)地域免許制度との整合性があるというのが条件になっている。たとえば、富山県は3局のうちテレ朝が無く、ケーブルの18の事業者で100%カバーしている。ではテレ朝はどうやって見ているのかというと北陸朝日放送が金沢の電波を再送信している。アナログではずっとやっているがではデジタルでは? ということで聞いてみるとCATV側はまだ言えませんという。でも本音はもちろんやりたい。これは地域免許制との整合性が問われているからだ。

Q.地域免許とは?

A.放送のエリアについて、そのエリアでの許可。関東は広域圏。東北で言えば青森なら青森、岩手なら岩手という具合に地域で放送電波を用意するかというもの。昭和30年代の初め、田中角栄がどんどん免許を出し、新聞社が放送免許を獲得していったという経緯がある。

Q.再送信をしたときにエリアをどうするのか

A.関西圏の広域民放はそこが心配。関西のケーブルテレビ局はサンテレビの阪神戦を放送したい。一方関西の民放は、広域圏をカバーするため、エリア内の山奥までアンテナを建設しているのに、どうしてサンテレビだけはケーブルテレビ送信でカバーできるのかというジレンマ。関西のもうひとつの問題は、関西電力の光ケーブルを利用するケースが非常に活発ということ。デジタル時代になった時にエリアを考え直してもいいのではないか

Q.エリアの競争規制は無いのか?

A.有テレ法では競合はしないように分配している。エリアにほかのCATVの参入は許可しない。地域独占。

Q.光ファイバーで再送信するときに、その光ファイバーケーブル事業者と、従来からのケーブル事業者が同時に同じ市場に出てくることは?
A.それはない。関西圏のケーブルテレビ局が、関西電力のケーブルを利用してエリアを広げている地域がある。表向きはケーブルテレビ局だが、光ファイバー回線は関電。つまり協力しながら広げていっているので対立しない。

同一性保持

加工の危険性、簡単に言えば再送信の際にCMを差し替えてはいけないということ。アナログ時代は技術が未熟だったために、同一性を確保しようという動きがあった。

視聴者負担の最小限-パススルー方式

基本的には、テレビを買ったらそのまま地デジが映るというのがいい。栄村はアナログの再送信ですらしっかりやっていない。これからどうしていくのかが深刻な問題。

自治体が、このままでは条件不利地域にしわ寄せが来るということで、自主的に集まって検討会をして総務省への突き上げ行っている。不利な地域にしわ寄せをしていいのかというのが根本的な問題意識で、IPも含めてどういうことができてどう使っていくかを検討しなければならないと総務省も考えている。
 民放は受信の秘匿性の問題や、ネットワークというのは何らかのウィルスが入ってくるかも、という意見を言う人だっている。

視聴者コスト負担の最小化

放送局のは公共性というが、困っているというところに足を運んでいないのがそもそも間違っている。長野県栄村のような場所に足を運んで現実を見て議論しなければならない。民放のローカル、キー局の人もやっていない。

IPマルチキャストについて、文化庁は家庭と結ぶところを通信と判断。そうなればテレビ番組の再送信では、著作権処理は全て検討しなおさなくてはならない。自動公衆送信の技術的な問題について、IPマルチキャストを主張する人たちもわかりやすい説明が求められている。

Q.栄村の再送信サービスを停止の方向に追い込む動機はなんなのか?

A.栄村の問題は、放送局側が論理立てた動機はないと思う。録画ネットの問題はタイムシフトの問題でもある。それに対してどういった権利保持ができるのか、放送局側が主導権を握りたいのではないか。タイムシフト視聴を前提にすると、、放送事業の根幹である編成が意味を失う。自分たちで対抗のビジョンを持っていこう、という流れがあるだろう。

Q.スポンサーはかなり疑問を感じ始めているのではないか。将来、スポンサーはどっち選ぶ?

A.広告主はそこまで考えていないと思う。スポンサーとしては、どれだけの視聴率の番組に広告を出した、というモデルだけ。とは言え、広告効果のある形は放送の仕組みだけではなくほかの手段もある、という認識が育っていくと見たほうがいい。

Q.HTMLは静止画しか入らないけどBMLは動画に同期して入れられる。BMLで相互にやるにはブロードバンドで相互にやると思うが、ブロードバンドと電波またはRFとの組み合わせでできる。BMLがいいのか、ヨーロッパの規格がいいのか。新しい広告の可能性として、同期しながらユーザー絞って相互でやり取りするというのは考えられていないのか?

A.やって成功している例は無いと思う。

Q.単価の非常に大きな価格の広告事業主と、小さな価格の企業主とでは行動はちがうのではないか?

A.例えば、1セグ放送では、どういったところで広告を露出させるか、というところにアイデアが競われるだろう。そこをプロデュースする人も増えてくるのではないか。広告会社といっても地方では企画提案しないで、営業のみの体制。そう考えるとローカルのCM市場は、どちらかというとテレビ局の営業が地べたを這って開拓している。キー局ではキー局の、ローカルではローカルの手法がある。

Q.アメリカのB-フラグ(コピー禁止フラグ)義務の棄却の件どうみるか?(Bフラグ:ブロードキャストフラグ。FCCが全ての電波にフラグをつけてコピーガードが出来る、というものを義務付けようとした。)

A.アメリカではFCCが決めるわけだが、それとは独立して司法の判断もある。アメリカなりの問題へのアプローチであり、解決の仕方ではないか。

Q.HDDコピーに対するスタンスの違いをどうなのか?

A.正解があるわけではない。これが強い、というものが残る。そこに意見を提案できる人が出てくるべきと思いませんか。

デジタル化について

デジタル化を、地上波放送局はやりたくなかったという経緯がある。しかし、デジタル化というのは時代の趨勢。放送がアナログのままだったら、自分たちの利権を温存するのかと非難があったはず。ただ、エリアの市場規模と放送事業のあり方で言えば矛盾がある。デジタル化はそれを再整理するチャンスかもしれない。その時の問題は中継用の15000局をデジタルに置き換えること。例えば、長崎は中継局ひとつの売上は、首都圏に比べて訳50分の1。これでは競争にならない。アナログ放送の拡大は五月雨式にやってきた。免許の募集して手を上げたところがやってきたが、今回は期限を決めてデジタル化をやるわけで、キー局のように投資してもお金があまるところと、年間営業利益が何億という会社では当然差が出る。投資ができないところもでるだろう。

そこで条件不利地域のエリアカバーをどうするか。これはケータイ電話でも、ブロードバンド環境としても深刻な問題。e-JAPAN計画として、条件不利地域の課題を政策的に考える必要がある。

Q.これまでの関連から言うと栄村がやっていることはエリアカバーしたいが、お金がないというときに一番安いコストで、実現するという話。これは認められないのか。

A.多分後2年くらいで変わる。県庁所在地から電波出したときに、カバー率どうなるか、カバーできないときに、(再送信が)なぜできないか、となるはず。現時点での発想が固定されないはず。

Q.なぜ、いつかしなくてはならないのに検討をしない、ちょっと動きが出てきたら訴訟を起こす、となるのか。

A.訴訟はともかく、確実にエリアカバー問題はネックとなる。カバー率がネックになるはず。そのときに論議になる。

Q.これからは、これだけ、というやりかたではなく、様々な選択肢があってのいいのではないか。栄村はあんなに頑張っているのに、なぜつぶすようなことをしているのか。

A.しっかり考えている人たちがいるということは大切。現場に行って、栄村の実際を見てから話をすることが大事。

Q. 地域独占のケーブルテレビ会社は潰れるのではないか?失敗はしないと思うが、東北では潰れたりもしたが・・・これから総務省はどういった対策?

A.ケーブルテレビの始まりは、たまたま東京の電波が受信できるポイントを見つけ、過疎地でも巨人戦の野球が見たといった第一世代がある。そのときは、エリア外の再送信は問題視されていなかった。アメリカではUHFの電波を取れなかった資本がケーブルテレビ事業に着目し、そこに多くの番組を流した。そんなことでケーブルテレビは変質していった。ケーブルテレビ局で黒字になっているところが増えてきた。しかも資本の集中が起こっている。ただし、多チャンネルの有料契約で儲かっているのではなく、電波障害の助成金で儲かっているのが多い。

Q.デジタルに移行した場合のビル影の問題は、保障はどこがするのかという問題は考えられているのか?

A.アナログのようなちらつきは無くなるが、全く映らないというような事態が増えるのではないか。見えない地域が出てきたときに、費用対効果を考えて何をもってくるのか、という選択ができることがいいと思う。そのためには、技術も含めた提言のタイミングが大切になるのではないか。

Q.テレビはインターネットで流すのは一番安くなる。ローカル局も安いほうが良いはず。しかし、キー局はわざわざ高いやり方でやる。

A.その議論についても、タイミングがあるはず。放送の設備はやたら高い。適正な価格なのかどうか、IT入札と同じで入札の仕方を考えるべき。公共性を保つために使うことになっている、機材が高い。特別なサービスをやりたいから払う、という場合であったとしても、基幹的なコストはどうするのか。今の時点で、その論議は難しいだろう。

Q.長野県で言えば、知事は、金が無いからデジタル放送の普及に賛同していない。なぜ一番安い方法を選ばないのか。

A.そのことでいえば、安定性はどうなのなどの問題があるだろう。NHKなどにある“あまねく”のエリアカバーがどれだけ事業として成り立つのか。ローカル局はエリアカバー率が成り立っていなければスポンサーはつかない。そういった場合にエリアカバーをどうやって100に近づけるのかという問題が生じる。そうなると学習をする。そして、新しい技術で低コストでどう取り込むか、という流れもうまれるはず。端的に言うと、放送屋はビデオ技術がわかってもネットワーク技術はわからない。ノンリニア編集がいいとわかっていたとしても、ハングアップしたらどうするか。今のハード機器メーカーは休日でも抱えて持ってくるけど、インターネット系では休みのメーカーもあったりしてね。安定性の問題は運用性もそうだが、トータルな安定性も考えなくてはならない。

第4回「ライブドアのワイヤレス戦略」

概要

ライブドアは、11月から無線LANによるブロードバンド・サービス「ライブドア・ワイヤレス」を開始します。その目玉は、月額525円という低料金で最大54Mbpsの通信速度を実現することにあります。しかし、こうした無線LANによる公衆無線サービスは、過去に何度か試みられ、事業としては失敗に終わりました。ライブドアには、今度こそ成功する秘策があるのでしょうか。今回は、ワイヤレス事業の陣頭指揮をしておられる照井副社長に、その戦略をうかがいます。


講師:照井知基(株式会社ライブドア上級副社長)
モデレーター:真野浩(ルート株式会社 社長)

日時:9月29日(木)19:00~21:00
場所:東洋大学白山キャンパス 5号館5202教室
   東京都文京区白山5-28-20
   地下鉄三田線「白山」駅から徒歩5分
   地下鉄南北線「本駒込」駅から徒歩5分
入場料:2000円

レポート

要旨

真野:インターネットの普及によって通信基盤が従来の親方が自立分散型に変化している。ところが電波政策は昔ながらのやり方が続いている。電波を利用したいという需要は増えているが、電波政策が理由で揉めている。電波でブロードバンドというかたちが期待されていながらも、ここ10年ほど普及していない。05年度下期はこの問題に集中して、ICPFでの議論を進めていきたい。

照井:プロ野球参入の件では結果的に負け、通信と放送の融合に関してフジテレビの件があった。その後、日テレが配信やると言ったり、民放連とソフトバンクが組んだりと裾野が広がった。きっかけをつくった我々としても、喜んでいる。今日話をするワイヤレスは我々が期待している分野であり、なぜライブドアがこのビジネスをやるのかということを話していきたい。

ライブドアはポータルを中心として大きくしていこうというプランを持っているが、これについては、ヤフーとヤフーBBの相乗効果がうらやましいと思っている。ライブドアというポータルを大きくするためにインフラを提供しなくてはならないと考え、ホットスポットはあるが、まだ少ないし使いにくい、ということでワイヤレスのインフラ構築を始めることを決めた。

公表した計画では、当初は山の手線内で2200箇所と言ったが、東京には電柱がなくなってきている。東京電力と話をしているなかで、2100くらいでスタートとなる。特徴はいままでにない面展開をすることと、525円で提供するということ。山手線の中に2200箇所のアクセスポイント(AP)を設置して、面積で80%をカバー。徐々に山手線の外に出て、後々は一都八県まで広げていくつもり。ほかに六本木ヒルズなどの大型商業施設をカバーすることを想定している。

IEEE802.11b/gという技術を使っているので、ひとつのAPに何人アクセスするかによるが、ベストエフォートで50Mb/sほど。発表会の際、525円でペイできるのかと質問があった。我々はあくまでポータルに誘導するために作っているようなもので、コストをユーザーに転嫁して重荷になるようでは意味がない。無線で接続する際は必ずポータルを経由する。そこでコンテンツを観ていただく、有料コンテンツにアクセスしていただく。インフラはインフラで黒字化させるが、ポータルとの相乗効果でやっていきたい。ライブドアのポータルを利用する場合は、525円すら支払っていただく必要はない。通信事業者はユーザーからペイできる金額を支払って貰わなくてはならないという観点だが、我々はポータル事業者であり視点が違う。

なぜこの無線LANサービスをいまライブドアが行うのかというと、現在のサービスはエリアが少ないことや価格面など不満が大きい。ユーザーにはとって使い方が難しいと感じるようなサービスもある。料金が安く、どこでも繋がり、スピードが速く、安定したサービスを提供する。電柱をメインとして展開しているが、もともとアステルをやっていたYOZANと組んで、電柱の権利を提供していただく。自動販売機も想定しており、自動販売機の中の在庫管理を研究されている会社とも提携することにした。液晶パネルつきの自動販売機広く設置されており、葉場所の確保という点出で展開しやすい条件が整っている。

ローミングを最大限利用していきたい。 Wi-Fiで繋がることがベストだが、利用者が繋がらないという状態を取り除くためにローミングを取り入れる。線を引っ張ってではプロバイダは赤字になってしまうがワイヤレスなら低コストで行える。無線LANというとノートパソコンをイメージする方が多いが、無線LAN対応デジカメやオーディオプレイヤなどどんどん新しい製品が出てきている。ライブドアでいうところのブログサービスの更新やストレージとしての利用、無線LAN対応のオーディオプレイヤ向けに音楽配信のスタイルを作ることも出来るはず。付加価値を作り出していくことで利用者を増やしていく。

ハードウェアの話は鶏と卵になりがちだが、まずはノートパソコン、日本では成功事例があまりないがPDA、次にオーディオプレイヤや、ソニーのPSPや任天堂のDSなどのポータブルゲーム機、ゲーム端末は我々のデバイスとしては有効と考えている。その次にITSなど、また、公共料金のテレメーターなどの情報も電波で飛ばしていければと考えている。

ライブドアは携帯電話に参入していない。携帯電話に参入していく気もない。Skypeをダウンロードできるようになっているし、他にもP2Pの通話ソフトはたくさん出てきている。これらは電話ではない。どちらかといえばインターネット上で動くたくさんのアプリケーションのうちの一つに過ぎない。結果的に電話として使う人は出てくるだろう。

ユビキタスと言う言葉がはやりだが、我々のサービスを中心に広めていけるのではないか。モバイル用途だけでなく23区の中の住宅街でも家の中にも電波が入ってくればどうか?ADSLを引いたが、実質2Mとか3Mということもある。それならばADSLを解約してライブドアワイヤレスのサービスを利用する人も出てくるだろう。学校・病院も想定している。インフラが整っていないと思われる小さなクリニックなどもあるから、電子カルテ等に対応していくために、無線のサービスをプッシュしていきたい。

iBurstについては日本では京セラがずっとやってきている。特徴は電波がキロ単位で飛び、走行中も繋がること。車の中でソフトフォンでつないで通話したが非常に快適。 Wi-Fiの技術より、もしかしたらボイスのサービスに向いているのかもしれない、と思えるほど安定している。周波数の効率も高い。オーストラリアだとシドニー、メルボルンなどでもう商用サービスは実施されている。我々としてはiBurst技術を、自治体や医療、セキュリティなどの面でも使ってほしいと考えている。教育機関など、いたるところで使って貰いたい。ただ儲かるためだけに、とは考えていない。

これは聞いた話だが、阪神大震災時にビルが倒れて、大変な状況であったが、自動販売機だけは明かりがついており、使えたとのこと。自動販売機をAPとして使うワイヤレスサービスは、災害時の通信インフラとして使えるなど面白いことが出来るのではないかと考えている。しかし、課題もある。ローミングを積極的にしていかなくてはならない。そもそもエリア拡大をしていかなくてはならない。自治体などでも取り組んでいかなくてはならないこともある。

収益構造は、コンテンツでもうけていきたい。最初はビジネスモバイラーといった層と考える。じわじわSkypeなどを通じて一般の層も広がっていくことで増えていくのではないか。法人からの引き合いもいくつか来ている。PHSは線が細いし月額料金が負担、というところで利用していただく。セキュリティ、VPN等にも取り組んでいかなくてはならない。

最終的にはユーザーに便利なインフラだと思って貰わないと意味がない。ライブドアとしてはバナーなどポータルを中心としたビジネスを考えている。決済を代行して手数料で収益を上げるなどのモデルとして。コンテンツホルダーから配信してほしいという話も聞く。

工事の計画は選挙の影響を受けてかなり遅れた。法的にどうというものではないのだが、工事が遅延しがちになった。半径100メートルほどの間隔で設置している。本当は綺麗に並べていきたいが電柱の都合などでそうもいかない。ライブドアのデータ部門は新宿にあることもあり、新宿はかなりカバーできている。電柱にライブドアのロゴが見えたら使えると思っていただければ。

今まで何社かこういう挑戦をした会社があったが、通信費で儲けるのは非常に難しい。コンテンツで儲けようとしているのが特徴だと思っている。なにかと話題を振りまく会社だが、こうした挑戦をしていきたいと思う。

質疑応答

1. MISとの相違について

会場:MISがやっていたサービスとはどこが違うのか?

真野:大まかに見れば差異はないと思う。MISが想定したのがまさに(ライブドアが試算した数字と同じ)25億だった。何に必要な金額かと言えば、山の手線内を埋める金額が25億だった。MISとしては通信費で成り立つと考えていた。

照井:全国展開すれば調達コストも下がってくる。iBurstまで手を出すと足りないが。

田中:真野さんのベンチャーであるMIS社は、資金が足りなくなって事業から撤退した。
それに対して、ライブドア社の場合は、いつまでにどの位の事業展開ができていなければ事業から撤退するというような皮算用はあるのか?

照井:具体的な皮算用はない。しかし、ライブドア社が事業から撤退する場合は、事業を他者に売って撤退するので、事業自体は継続することになる。

2. 駅、空港への設置

会場:駅・空港の設置はどのように進めているか?

照井:ケースバイケース。成田はヤフーがやっているし、地方の空港は直接話し合い。無条件で一気に進められるのは自動販売機だけだと考えている。
会場:昔MISがJRの駅に置こうとしたら紛争処理委員会から駄目が出たが、そういったことはおきていないか?

照井:駅の中におこうとはしていない。外から囲んでいく。

真野:MISの時は法律改正前だったためAPを置くことがでずサービスが開始できなかった。
会場:JRが本当に拒絶した理由は?

真野:自分達のプロパティを利用されたくないと考えた点が大きい。
会場:JRが駅構内で無線LANサービスをしていたからでもある。

真野:自分たちで儲けられると思っているところは自分たちでコントロールしたいからだろう。MISのときは一種、二種の区分けがあった。当時MISは当時社員5人。その会社に公益特権を認めたら、同様の事業者が次々と出てくることになる。それが警戒された。電波法改正が今回の国会に出ている。これから、いろいろ変わるだろう。

3. 対応する機器の範囲

会場:デジカメ、電話で無線LANを利用するとしたらライブドアのポータルを通過することはないが?

照井:組み込みます。メーカーに組み込んでもらったり販売するメーカーにのせる。ハイブリッドモデルとして考えている。全部が全部ポータル通るとは考えていない。

4. 安心して利用できるか

会場:パケットダンプされたら認証できないが?
ライブドア技術スタッフ:現段階ではSSIDとWEPという一番セキュリティレベルの低いものしか使っていない。

真野:MISはセキュリティにこだわったもの作り、「セキュリティにこだわった上で、利便性を向上していけば」というスタンスだったのに対して、NTTコムなどは、「セキュリティにこだわる前に利便性があるべきで、時代とともにセキュリティも向上していけばいい」ということだった。ただ、後者は怖い事件が起こらなければ、という前提。

会場:基地局1つあたりのグローバルアドレスはどれくらいか?

照井:ライブドア技術スタッフ:APあたり接続が最大で65くらい。それに割り振るDHCPサーバーがある。現段階で2000箇所にアクセスしてきても割り振れるだけのIPアドレスはある。

会場:ネットワークゲームなどレイテンシーの問題があると思うが

ライブドア技術スタッフ:だいたい50から100ミリ秒の間を狙っています。

5. 周波数免許の問題

真野:第三世代携帯(3G)にリザーブされている帯域に、IPモバイル、iBurst、ウィルコムなどが手をあげているが、もともと3G用のリザーブのものだから、iBurstはだめ、ウィルコムもだめ、TDDでないと駄目ということになると、IPモバイルに割り当てる。しかし事業者としてIPモバイルを見た場合、資金力、持続性の観点からいくと駄目だという見方もある。そうなるとリザーブしていた周波数が空くことになり再募集をすることになる。いかに技術にディペンドしてしまって融通が利かなくなったかという結果の好例だ。
会場:まったくそう思うけど、世界中でその帯域は3Gという合意は得られているわけですよね?

真野:例えば道路でいうなら特定の1車線を公共利用にしましょう、としたとこまでは良かったが、走る車のタイヤの空気圧まで決めてしまった、ということ。

会場:総務省がそうした理由は技術的詳細まで決めなくては世界に移動したときにそのまま利用することができないから。

真野:それはこれらのルールがレイヤー分離ができない時代に作ったから。

会場:ではなぜ第三世代で今募集しているのか?

真野:第三世代に2GHzとなっていて、それで駄目だった場合に変えるということでしょう。総務省には一年くらい延びてもいいや、という考えがあるんじゃないか?

照井:半年から一年かかるでしょうね

真野:その帯域をWi-Fiでとれるんですか?

照井:とるんです。AP2200じゃ、まだまだ足りない。

6. ローミングについて

照井:我々は努力を継続してやっていくとしかいえない。我々が設置しなくてもローミングでという考えでいる。

会場:使い勝手を追求するのであれば、本当はローミングしていくべきでは?

照井:もちろんライブドアとしてはそれやりたいけど、相手がなんというか。われわれが何万と言うAPを打って、圧倒的に数があるとなったとき、彼らが、独自にやるより僕らと組んだ方が得だ、となるタイミングがいつか来ると思う。

会場:地下鉄はAPを置く余地はないのか?

照井:ないですね。東京メトロに関しては、これ以上工事はしないでくださいということ。
真野:MISがそうだったように、既設の事業者と相互接続か、公共のものだから置いてくれ、というか2つの選択肢がある。

7. 他の技術との相互接続

真野:Wi-Fiと携帯電話のコンバージェンスが必要になってくる。総務省は固定と有線の番号ポータビリティを検討し始めた。iBurstを携帯と捕らえるのであれば、それらの相互の問題はどう考えていくか。

照井:PHSと似てはいるが、違う。我々はデータ通信と考えている。FOMAと Wi-Fiはライブドアがやるかは別として、共存していかないとならないとは思う。

会場:4Gがそろそろ出てきてますよね?2年後3年後を迎えたときにユーザーを拡大しなければならない時にはもう魅力のないものになっている可能性があるのでは?

真野:技術ではなくて、二年後、どうかということはあると思う。

会場:iBurstの方向性は従来の移動体通信の発展経緯と逆行しているのではないか?

照井:iBurstとWi-Fiと共存していくと思う。

会場:だったらPHSでもいいのでは、とはならない?

照井:PHSすらない場所もある。 Wi-Fiで数十%カバーしたあと、残りを、という感じでいいと思う。

8. Skypeについて

真野:インスタントメッセンジャーは電話ライクじゃなかった。Skypeは電話ライクだった。そこが普及の一因と思う、次はハードだろう。

会場:e-bayの買収は?

照井:われわれは日本での代理店に過ぎない。我々がもっているのは販売代理店の権利で、彼らのビジネスにどうこう言う立場にない。

会場:パワードコムがKDDIに買われたら?

照井:パワードコムの中根さんと私と堀江の三人でやったプロジェクトだったからすごく早かったこともあるが、買われたらスピードは落ちるだろうなと思う。

9. AP設置場所

真野:付ける前にやめてしまったけど、NTTの公衆電話ボックスにつける規格を作っていた。あれらの場所は使えないか?

照井:ライブドアとしては可能性がある限り拡大できることはやっていきたい。

会場:バス停は考えている?

照井:バス停より自販機の方が数は圧倒的に多い。

真野:バス停は目的が公的なものなので、意外に難しい。路線バスの許認可条件が400mだからそれ以内にあるということになる。

10. コンテンツの提供との関係

会場:コンテンツが充実していないと結局ポータルといっても通り道にしかならないのでは

照井:がんばるしかない。コンテンツの充実に関しては、ライブドアは無線LANの拡充とは別に充実させていかなくてはならない。これに関してはコンテンツプロバイダから買ってくる。

真野:ヤフーBBはブロードバンド人口を増やし、定額制を広めたことにインパクトがあった。無線LANだったらワイヤレスに向いたコンテンツがあるのではないか。

第5回「技術革新と電波政策」

概要

電波政策は、周波数の再配置、携帯電話事業に対する新規参入、無線LANなどのコモンズ拡大という大きな構造改革を伴いながら進めらています。これらの改革には、電子、通信、情報技術の変化にともなう必然的な要求が潜在しています。インターネットと無線を融合したビジネスを多く手がけ、総務省ワイヤレスブロードバンド推進研究会の委員でもある真野社長に問題提起をしていただき、インターネット時代の電波政策と技術課題について考えます。

講師:真野浩(ルート株式会社 社長)
モデレーター:池田信夫(ICPF事務局長)

日時:10月27日(木)19:00~21:00
場所:東洋大学白山キャンパス 5号館5202教室
   東京都文京区白山5-28-20
   地下鉄三田線「白山」駅から徒歩5分
   地下鉄南北線「本駒込」駅から徒歩5分
入場料:2000円
    ICPF会員は無料(会場で入会できます)

レポート

要旨

真野:平成電電がMIMO(マイモ)というワイヤレスの技術を使って自動販売機を利用したサービスを打ち出した。かつてYOZANが同様のサービスをやっていたり、今はライブドアが無線のサービスを打ち出しているが、技術が見え隠れする割には技量がない状態だ。最近注目を浴びているWiMAXなどは、YOZANが今年の12月から商用サービスを始めるとしている。しかし日本ではWiMAXの周波数は存在しない。なぜそんなことが起こっているのかというと、技術の変遷と政策がかみ合っておらず、根本的に技術が替わっても政策に反映されていないところが大きい。今日の話の中で言う技術の革新はインターネットの前と後であり、インターネット時代の電波政策がどんなものかを取り上げていく。

インターネットがもたらした最大の変化とはコミュニケーション形態の変化。情報の共有化を与え、サービスと構造の水平分離、供給者志向から消費者志向へ、そして自己責任の増大させたことが大きいだろう。その中でインターネットのカルチャーのキーワードは公平性であると考えている。

インターネット前のコミュニケーションは集中管理型だった。ネットワークや人間世界もそうだった。個々のエレメントにアベレージが求められ、突出したものは嫌われる傾向だった。それがインターネットの世界だと、バラバラで勝手に有機的に結びついていながらも、特定の目的に向かって結びついているというように非常にパーソナルな世界である。個が重視されながらもルールが必要であるのがインターネットの世界だ。

インターネットの特性は自立分散ネットワークであること、Simple & Stupidであること、
End to Endであること、水平分離構造であること、ベストエフォートであること。これらは最初から必然性を持って現れている。ネットワークの進化の過程の中で結果を見出している。 インターネットでは、はじめに端末とネットワークが個々に存在していた環境からお互いに繋ぎ合わせた。インターネットの立ち上がりは、元々ネットワークを持っていた人たちがお互いに相互接続を実現させようという流れだった。

相互接続が増加していくのは、必要最小限のルールの中で実現されていった。コミュニケーションに必要なルールは少なく、誰から誰への通信か明示すること、自分の友達は誰かを告知することぐらいである。インターネットは極めてシンプル&ステューピッドであると言える。

多様な参加者が相互接続性を求めて、互いに標準や規格、ルールを策定、制定し今日にいたっている。以前はスタンダライゼーションをして、標準化をして普及させていったが、既に普及しているものを繋ぐにはそうせざるを得ない。ルールを決めるよりも、大まかな合意によって決まる。これらは必然的に起こることであって流れの中で生まれてくるものである。

インターネット上では全ての通信は小包(パケット)でしかない。内容はお互いの利用者同士が決めることである。網は、すべての利用者の共有財産のため、特定のサービスと構造が密着しない。

インターネットのサービス特性はベストエフォートである。参加者全ての努力の結果として通信が成立する。サービスの形態にはホスト&ゲストもある。インデックスとコンテンツは別であって情報の場所と中身を結びつけることで商売を行っているものもあるが、コンテンツ自体はエンドto エンドで、ニュースの配信先と家庭は直接に繋がっている。

カルチャー的には自らが情報の発信者になり、自己の責任が大きくなっていく。他人を許容しない場合は孤立していき、生産力の発散を招く。一方でリスクが分散している。従来の集団指導的カルチャはリーダーに依存しているためカリスマがいれば非常に強い。集中による強大な生産力を発揮するが、一方でリスクが集中している。

インターネットが始まる前は電話のために電話のインフラが、放送のために放送のインフラがあった。インターネットが始まった頃は電話の上でインターネットがあり、せいぜい上に載るコンテンツは経済、教育までだった。光ファイバなどのインターネット用のインフラが出来てくるに従ってコンテンツも広がってきた。最終的には放送も飲み込んでいくだろう。

こういった状況の中で電波政策とはどうなっていくのか。固定通信、ブロードバンドサービス、半固定通信、移動体通信と様々な電波利用シーンがあるがワイヤレスだけの閉じた世界というものはない。つまりワイヤレスとワイヤードが融合しなければ成り立たない。しかしながら法律は電波法と通信法といったように分かれている。

従来は白山駅から東洋大学まで歩いてくるときにほとんど通信網をまたぐ事はなかった。有線系の通信網は「疎」だった。 このためワイヤレスは、長距離をカバーする必要があったし、基地局間通信のコストは高かった。最近は白山から東洋大学まで歩けばいくつの通信網をまたぐかはわからない。あちらこちらに有線通信網がある中で長距離の動かないもの同士を無線通信網で結ぶ必要は果たしてあるか。既存の有線網と無線を繋ぎ、広帯域で汎用性の高いものが必要となる。

従来は高い周波数は値段が高くて使えなかった。徐々に利用できるようになって行く課程で割り当てていった。しかしそれらの割り当てが進み空きがなくなっていく中で共用検討を始めた。しかし既存事業者に影響が出るために問題である、となった。

アナログ通信からデジタル通信になり、総務省は携帯電話やFM局などの高度化を審議した。アナログからデジタルへの進化は大きな変化はない。アナログだろうがデジタルだろうが通信が途絶えたら情報が変化するか途絶えるかである。連続通信は途切れてしまった場合、情報は変わってしまう。繋がるか繋がらないかに関して電話網は限りなくベストエフォートである。なぜなら必要な回線数だけ交換網を用意していない。100人が100対100で通信できるだけの用意はしていない。ただし繋がった場合の音声帯域は確保している。

現在のデジタルパケット通信はStore & Forwardである。パケットのリトライがとても早い間隔で行われ品質がリカバーされている。リトライの増加によって遅延が起こるがそれはアプリエーションに依存する。電波の使い方はアプリケーションによってかわるはずである。

昔は標準化させたものを普及させた。つまり標準化ありきだった。独創性より調停力が重要だった。先行者による圧倒的な資本投下による支配である。現在は作ったもの、普及したものが標準となっている。つまり独創性が必要となっている。後発者は勝ち組と負け組みの二極化が起こってくる。

研究開発体制も現在の電波政策に大きな影を落としている。上位層と下位層の異なる視点、視座から、個別に無線通信システムを設計している。これに対して、全体像を明確にし、システム設計を重視することが求められる。

電波資源の有効利用をするために、従来の用途別、長期かつ固定的周波数割り当てを改めて、一定期間毎に利用状況の見直しを行い、再配置、配分を行なう必要がある。電波政策に求められるのはテクノロジーディペンドしない電波政策、つまりモジュール化されたものが求められている。パケット交換技術、階層設計技術により、柔軟性の高い高速移動無線通信システムの開発、標準化を行なうことが望ましい。すなわち、インターネット技術により最適化されたシステムを目指す。 これらは、多様な用途に対応しながら伝送媒体に高い適応性を持っている。また、網に依存せずに新しい技術が導入されている。階層設計をすることができれば長期的に適応することが可能である。

ワイヤレスブロードバンド推進の今後として、電波資源の利用については公共財としての包括的なグランドデザインの確立が必要だし汎用技術(IP)プラットホームによる、スペクトラムとアプリケーションの垂直分離をしなきゃだめ。用途別、個別割り当てを停止して汎用的資源割り当てを推進する。事業(通信、放送)と電波の分離をするべき。その上で柔軟な電波政策の推進を計る。無線(電子通信)とネットワーク(情報処理)の融合による、研究、開発体制の確立を急ぎ、産・学、 学・学の連合によるシステム技術評価力の向上と啓蒙を進める。これらを政策に反映していかなければならない。

質疑応答

池田:ブロードバンド推進研究会はいつ結論を出すのか。

真野:年内に最終報告を出す予定。その後でパブリックコメントを求める。

池田:今までこういったやり方は取ってこなかったが?

真野:なかったですね。そういう意味では大きな変化だと思う。割り当てる電波がなくなったからであって必然的な流れだ。

池田:研究会の前提としてどの周波数を使うか、といったことは前提となっていないのか?

真野:研究会としての決まりごとはない。どのようなシーンでどのような利用が考えられるか、といったことでやっている。官僚のイマジネーションを超えるようなものはできない。

池田:実際に使う段階でどの周波数を使うかというのは問題になるのでは?

真野:そこまでの段階に至っていない。通信事業者と自営通信の戦いみたいなものが見え隠れしている。

田中:世界的に見て公共用の周波数帯は確保しているという前提だが、IPで共通化するという有効利用の観点からは、安全・安心が求められる場合どのような割り当てが必要か? 電波法が改正されたが、総務省が決めた金額をインセンティブとして課金するという流れの中で、民主党からは国が決めた額を課金するのはよくないのでは?といって声が上がっている。どう感じるか?

真野:公共利用については、例えば家庭で110番の電話機と普通用の電話機といったように2つ用意しているか。勿論していない。つまり公共用途だからと言って媒体まで二重投資する必要はない。電波もまた然りで、緊急の通信を妨げない範囲で共用することは技術的には可能である。媒体の安全・安心をどこまで求めるか、それはプライオリティコントロールしていけば良い話。排他的・独占的にしていく必要はない。
インセンティブと電波利用に関しては、道路財源の話ではないが省庁権益のような気がする。プライスを官が決めるという以前の問題として、受益者負担とするなら受益者の範囲が明確ではない。周波数に課税するのは、課税方針がテクノロジーディペンドであるといえる。

太田:ワイマックスのキャリアセンスは?

真野:プロファイルによりけり。あれば対応する。

太田:無線LANをTDDと言い切ってしまうのは?

真野:それよりもテレビの空きチャンネルでやったほうが。日本が率先してジェネラルな周波数帯を作って、免許用件は隣の帯域には漏らさず、共存ルールを決めてその他は自由だ、というものが作れればとても画期的だ。

池田:公衆無線でやる場合は1G以下の周波数が便利なのか?

真野:低い周波数は便利。浸透性もある。

原:電波政策そのものを見直す動きは。

真野:ワイヤレスブロードバンド推進研究会、情報通信委員会などがあるが、ビジョンそのものは出ている。再割り当て等、具体的にどう使うかを考えているが汎用性多様性が失われていってしまう。

田中:ジェネラルにしすぎると効率が落ちると思うが、イメージとしては現状よりは広げつつも、技術の進歩とともにさらに、といった感じなのか?

真野:全部やる必要はないが、例えば特区のようなものを作ってみて、そこで出来たものを広げていくようなシステムをトライしていくべきだ。

田中:IP網を利用していくというのは、必要性を感じていながらも個別の企業としては囲い込みをしたいと考えているため、なかなか実現しないのでは?

真野:もちろんそれはある。アプリケーションと電波の購入者がディペンドしてしまっている。

田中:多くの人が気付いていながらもビジネスのためにみんなそうしていないのか、それとも誰も気付かずに現状のほうが本当に良いと思っているのか、どちらなのか?

真野:どうなのだろうか。ワイヤレスブロードバンド推進研究会ではIP化の流れは必須であるということは明示している。

原:日本には無線のIP化をするような人はいないということか?

真野:自分から投資をするほどのインセンティブが働いていない。日本というマーケットは大きくない。ではアメリカやイスラエルではなぜ新たな技術が出てくるのかというと、ビジネスモデル・マーケットを自国だけとは考えていない。そのためある程度思い切った事ができる。日本のメーカーやキャリアはそこまで考えていない。

池田:アメリカで言われるような700Mぐらいの低い、使いやすい帯域についての意見は日本では出てこないのか?

真野:日本では誰も手を上げない。最大の問題は、総務省に限らず、審議会や委員会の委員の人選を透明化しないとクリエイション、競争は起こりえない。委員を公募にするとか、委員に対して一般からの意見募集をするよう仕組みが必要だ。

第6回「ワイヤレス・ブロードバンドをめぐる政策とビジネス」

概要

携帯電話に3社が参入し、話題のWiMAXにも周波数を割り当てる方針が打ち出されるなど、電波の世界が大きく動いています。総務省の「ワイヤレス・ブロードバンド推進研究会」では、こうした問題を含めて様々な議論が行なわれました。このセミナーでは、研究会のメンバーである中村さんと、今回2.0GHz帯で携帯電話に参入する意向を表明したアイピーモバイルの竹内さんをお招きし、無線ブロードバンドの今後について考えます。

スピーカー:中村秀治(三菱総合研究所 次世代社会基盤研究グループ・リーダー)
      竹内一斉(アイピーモバイル取締役)
モデレーター:真野浩(ルート株式会社 社長)

日時:11月25日(金)19:00~21:00
場所:東洋大学白山キャンパス 3号館3204教室(いつもと部屋が違います)
   東京都文京区白山5-28-20
   地下鉄三田線「白山」駅から徒歩5分
   地下鉄南北線「本駒込」駅から徒歩5分
入場料:2000円

レポート

要旨

中村:ワイヤレスブロードバンドがなぜここまで注目されたのかということと、海外はどうなっているかということを話していきたい。

2001年9月にヤフーが登場したところから始まり、現在ADSLと無線LANが定番となりつつある。97年電気通信事業法改正でアンバンドル化され、2001年にヤフーが3000円でADSLを始めてからたった4年で2000万件というところまできた。インフラが先行することによって新しい技術が出てきた。こういった関係性の中でブロードバンドが日本の産業に大きな効果をもたらすようになった。

一方、ワイヤレスは11bから始まり、1990年に「11委員会」が発足したが、この10年間は需要が無かったということになる。いわゆるFMC(Fixed Mobile Convergence)で花開くという感じで考えていいのではないか。

海外で言うと、ニューヨークでインターネットができるホテルを選ぶ必要はなく、窓から勝手に電波が入ってくるような状態。マンハッタン中がホットスポット。ヨーロッパもかなり進んでおり、フランス7000箇所、ドイツ7000箇所(のホットスポット)というように欧米では日本以上に進んでいるのが現状。

一方、マクロ動向を見ると高齢化、ユビキタスな生活環境というように、データで見てみるとサービスをいくら頑張っても財の落ち込みをカバーできていない状態。もしくは物が足りていて投資活動の将来がないという状態。日本経済自体がなかなかうまくいっていないという現状がある。

電子商取引を日米で見てみると、B to Bは比率的に伸びてきているが、B to Cはもうちょっという感じ。広告を見てみると日本の広告市場は5.8兆円ほどといわれるが、GDPの比率でいうと日本は(米国2.1%、英国1.3%に対して)1.1%に過ぎない。まだまだ伸びる余地は残っている。

ワイヤレスで何が変わったかというと、家庭やオフィスでのインターネット環境をそのまま外にも持ち出していくということが可能となる。車の中の無線LANというように、移動中の通信がなかなか実現されていないが、家庭の中や、ビジネスのシーンからワイヤレスブロードバンドが浸透しつつある。

ブロードバンドの普及によってワイヤレスが広まりワイヤレスが使えるとインターネットの基盤の上で様々なことが可能となってくる。その中で第一にIP技術を無線環境で生かすための取り組みが必要である。

モバイルインターネットの利用状況からいって高速移動中のブロードバンド利用のニーズはかなり限定的。このためだけに高速移動プロファイルのための技術開発投資、電波資源が投入されるのは如何なものだろうか。

移動しながらの通信は、あれば便利なのだろうけど実際に絶えず動いている中での利用シーンというのは少ない。双方向ではなくダウンロードだけならばデジタル放送の活用が有効ではないかと考える。

防災無線がデジタル化されているが、とある政令指定都市ではアナログでは(電波は)受けることが出来ていたが、デジタルになった途端に受けることが出来なくなった、というような事態が起きている。日本特有の周波数の関係もある。周波数特性を踏まえた地上系無線の政策が必要。

海外では、フランスで175事業者がWiMAX免許に応札、ドイツのハイデルベルグで初の商用WiMAXが8月にサービス開始というように動きがある。中国では強力な中国共産党人脈で行われる取り組みは驚異的であり、日本やアメリカの市場を無視した自分たちの仕様を固めて、安くて良いものを追っている。

もともとFMC的な状態である欧州キャリヤ、ケーブルを軸としてFMCになった米国、という中で日本だけ取り残されているのが現状だ。

竹内:11月9日の電波管理審議会で認定が降りてモバイルブロードバンド事業を進めていくことになった。今日はその点を中心に話していきたい。

IPモバイルは専業ベンチャーという表現が先ほどあったが、3年ほど前に設立、TD-CDMAを事業化しようということで立ち上がった。IPモバイルは親会社であるマルチメディア総合研究所がTD-CDMA技術を進めていく上で移動体通信の分野をやるために作られた。

マルチメディア総合研究所は日本・韓国でTD-CDMAが立ち上がれば、という考えで活動をしてきている。IPモバイルは割り当てを受けて事業化、パフォーマンスを実証するのが役割という感じ。

TD-CDMAに関して様々な誤解があったが、実験局を設置して総務省に対して技術がある事を証明し、周波数も空いていたためビジネスをしたいという旨を伝え、割り当てを受けるに至った。

基地局計画については認定をもらい、2006年10月をサービス開始の目処とし準備を進めている。具体的には無線のビジネスなのでどこに基地局を置くか、機材の調達、実際の工事、といったプロセスになる。基本的にはデータ通信をメインに考えているため、既存の携帯電話事業者に比べ限定的な展開になると。

TD-CDMAの技術は第三世代の移動通信技術のうちの一つであり、CDMAと呼ばれる技術の中の一つ。使われている周波数帯の幅が中国で使われているTDS-CDMAと比べて3倍あり、理論的にはスルートップも3倍とブロードバンドに向いている。TDS-CDMAは今までのW-CDMAへの技術として認知され展開されているように思う。データ通信サービスを行っていくうえでTD-CDMAを選択した。

TD-CDMAのシステムに関しては基地局の先(バックボーン側)はIPネットワークで構成している。ノードそのものも小さく出来ており設置コスト・メンテナンスコストを含めて非常に安く実現できている。また非常に多くの同時接続者数を実現している。電話のマーケットが飽和しつつある中で人間が持つデバイスではないものを提供していく、という考えを持っている。

音声サービスをやろうする場合は品質保証等を含めて帯域を確保しなければならないが、データ通信サービスであるから柔軟にリソースを割り当てることが出来る。データ通信の定額制という意味で柔軟に対応していきたい。

IMT2000の規格にもなっているが、移動中の環境をどれだけサポートするかは重要な問題であると言える。いつでもどこでも繋がるということが、基幹インフラとして果たさなければならない条件だと考えている。移動時間が短くても、いつでも繋がっているというシステムが重要であると考えている。

MBMSと呼んでいるが、マルチメディアブロードキャスト-マルチキャストサービスを実現することが可能。TD-CDMAの特徴である基地局と基地局の境目でのスループットが非常に高い事を生かした技術。

移動体通信そのものに関しては圧倒的に携帯電話の市場規模は巨大市場であり、魅力的である。しかし、現在3キャリヤがサービスを行っている中で音声データ通信に参入しなければならないか、というとそれは違う。現状の9000万の端末数が倍になるのであれば、それはそれでいいが、ユーザーの立場から考えてみると、2台目の端末を持つことや今の倍の料金を払うことは果たして許容できるだろか。新規事業者としての役割はなんだと考えたときにデータ通信をきちんと立ち上げることだろうと。

データ通信と一言に言っても使い方は様々だ。安くて早いインフラをTD-CDMAの技術を生かして提供することが出来る。カード型、組み込み型以外にもデータ通信のオープンな仕組みを作っていくことが我々の役目だと考えている。

既存の事業者はインフラからコンテンツ、アプリケーションまでユーザーの使われ方を想定して、そこで付加価値、競争戦略、差別化のポイントなどを入れ込んだ形でやっていくのが今までの携帯電話のビジネスだった。

我々が新規事業者として入っていく時に既存事業者のようなモデルは取るべきではないと考えている。新規事業者が垂直統合型のモデルでトータルなサービスをユーザーに提供するのは非常に難しい。TD-CDMAという技術をしっかりとやっていくことで競争力を持つことがポイントだと考えている。

音声通話の方に関してはあまり積極的に考えていない。パーソナルメディアゲートウェア的なものが載ってくればとよいと考えている。我々は様々なデバイスを繋いでいき接続性を提供することで、いかに使ってもらうようにするかがポイントだと思っている。

■質疑

原:ウィルコムと同じサービスのように聞こえるが、なぜ一緒にならないのか?
竹内:技術が国際的な技術である点、拡張性が高い点、これからのブロードバンド化に対応できるポテンシャルが多分にあるという点でこの技術でやるべきだと考えている。
原:ビジネスが始まったら食い合いになるのでは?
竹内:市場はもっとあると考えているし、棲み分けが出来ると考えている。
原:ピッチと同じ運命を辿るのではないか?
竹内:データ通信だけで考えた場合と音声を載せた場合では大きく異なる。(音声サービスの)ニーズがあることは認識している。
山田:国際的な整合性を考えてTD-CDMAを選んだと言っていたが、実際に他の地域でTD-CDMAは事業として営まれているのか?
竹内:数で言うと23カ国ほどがやっている。大きいところで言うとニュージーランドのウッシというオペレーターが百数十局の置局をして1万5千から2万人のユーザーを集めている。TD-CDMAが本格的に出ているというのはまだ無い。先月、チェコでTモバイルが全国展開を始めると発表するなど徐々に立ち上がりつつある。周波数帯で言えば空いているところを貰って事業を始めるというのはIPモバイルが始めて。
住友電工 荒木:IMT2000は電話システムなので音声通話が入っていないと免許が下りないという話を聞いたが、免許要件に音声通話は入っていたか?
竹内:今回の要件に関してはデータ通信、移動通信という切りわけであって音声は義務ではない、という承諾を貰っている。
山田:世界的なユーザー数から考えてGSMのEDGEを選ぶということは無かったのか?
竹内:拡張性、今後のブロードバンドの展開、事業をやっていかなければならないという観点で考えたときにIMT2000でいこう、という流れとなった。
真野:技術選択というよりは手に入る技術の中での選択という印象を受けるが?
竹内:要はデータ通信をやりたかったので、様々な技術を見た中で、周波数を取れるのはどれかというところでTD-CDMAという事になった。
荒木:SIG1、SIG2を傍聴していたが、話がコントラバーシャルになってくると引き戻されるといった場面が何度かあったが。
中村:SIG1、SIG2の両方に出ているキャリヤ側の人間からすると、そこには触れるな、という事になってきてしまう。
真野:今回の(ワイヤレスブロードバンド研究会の)報告書で面白いのは、SIG1も、SIG2も自分たちだけではサービスが出来ないから補完的にならざるを得ないといっている。

真野:TD-CDMAに根ざしたデータ通信だといっているが、ドコモも10年前から人間に持たせる端末には限界があるから、動物や機械へ、と言っている。他の事業者が様々な可能性を打ち出してく中で、IPモバイルは技術にスティックしてデータ通信だけとしてしまうのか?
竹内:順序としてモバイルを立ち上げ、その次の段階として出来上がったネットワークをいかに生かしていくか。フェーズごとに考えていきたいと考えている。
真野:どこかに話を持ちかけに行くような場合のときに、相手はどういった相手を考えているのか?
竹内:まず考えられるのがISP。モバイルの分野を提供することが出来る。自分たちが主体として考えるのは次のフェーズだと思っている。
池田:研究会といえば、アメリカなら民間からの大胆な発言を受ける場だ。日本の報告書は官僚の作文としか読めない。
原:それが日本人だ。

第7回「ワイヤレス・ブロードバンドへの総務省の取り組み」

概要

日本が「ブロードバンド大国」になった今、ワイヤレスの世界に注目が集まっています。総務省は、民間の専門家からなる「ワイヤレス・ブロードバンド推進研究会」を開催し、今後5~10年後の周波数再編を見据えた検討を行ってきました。その結果が21日にとりまとめられるのを機に、これからの電波政策について総務省の説明をうかがい、その方針について議論します。

スピーカー:小泉純子(総務省電波部 電波政策課 周波数調整官)
モデレーター:真野浩(ルート株式会社 社長)

日時:12月22日(木)19:00~21:00
場所:東洋大学白山キャンパス 5号館5202教室
   東京都文京区白山5-28-20
   地下鉄三田線「白山」駅から徒歩5分
   地下鉄南北線「本駒込」駅から徒歩5分
入場料:2000円

レポート

「ワイヤレスブロードバンドへの総務省の取り組み」

スピーカー:小泉純子(総務省電波部 電波政策課 周波数調整官)
モデレーター:真野浩(ルート株式会社 社長)

小泉:ワイヤレスブロードバンド推進研究会を昨年の11月から開催しており、その結果がちょうど昨日(12月21日)に最終会合が開催され、最終報告としてとりまとめられた。今日はその全体の内容について報告をしていきたい。
 ワイヤレスブロードバンドについて、なぜこういった検討が必要なのかということを話していきたい。総務省はu-Japan戦略をはじめとしたユビキタスネットワーク社会を目指す中で光ファイバやADSLなどの有線でのブロードバンドを推進してきたが、それに加えてワイヤレスブロードバンドという無線での利用が必要になってくると考えている。有線と無線のブロードバンドが融合することによって真のインターネット社会が実現されるということで検討している。そのためには周波数が必要になってくる。
 すでに、電波政策ビジョンとして、電波需要が拡大していく中でどのように政策を進めていくか、情報通信審議会から答申を受けている。答申の中の電波開放戦略という7つの政策を推進していくことが挙げられるが、その7つというのが、

1 抜本的な周波数割当ての見直し
2 周波数の再配分・割当制度の整備
3 電波利用料制度の抜本的な見直し
4 研究開発の推進
5 無線端末の円滑な普及促進
6 国際戦略の一層の強化
7 安心で安全な電波利用環境整備

である。それに対応して様々な取り組みを行っている。一つは周波数の再編方針として、今後どのように周波数を割り当てていくか大まかな方針を取りまとめている。その方針に基づいて、電波の利用状況調査を実施している。周波数再編アクションプランを作成している。周波数再編を進めていく中で移動を強いられる実際の免許人の方に対しての措置として給付金制度で対応している。自由な電波の利用形態として登録制をはじめた。それ以外に研究開発、経済的価値を反映し電波法の改正により対応していく。
 個々まで説明したのは具体的に周波数という軸から見た観点だが、今後の世の中を見据えた検討を行っていくのがワイヤレスブロードバンド推進研究会の役割。移動通信システム、無線LAN、地上テレビジョン放送、RFID、その他システム等についての周波数の需要予測、それに対してのどのように確保していくかを大まかに示している。
 ワイヤレス研究会を開催していく中で、ワイヤレスブロードバンドシステムがどのようにあるべきかを検討するかの視点として、ユーザの視点、産業の視点、技術革新の視点、公共性の視点、セキュリティの視点、電波の有効活用の視点という6つの視点を考えた。具体的に導入シナリオについて検討を行った。ニーズといってもユーザの観点から、利用シーンとして、類型化を行った。この利用シーンというものは、今後どのような無線通信が必要となってくるか、どのような場面で必要となってくるか整理したもの。

【利用シーン1】ユーザは何処で使えるかを全く意識しなくてよく、また、一度接続されると、車中のような移動中を含めどの様な状態においても一定の通信品質が確保されるサービスを享受
【利用シーン2】日常の行動範囲内であればどこであろうと、自宅や職場から持ち出したパソコンをブロードバンド環境でストレス無く同様に使用することができるサービスを享受(モバイルホーム、モバイルオフィス)
【利用シーン3】ある特定地点でのみで利用可能であることを意識して利用するものであり、そこに行けば簡単にかつ多様なブロードバンドサービスを享受
【利用シーン4】有線によるブロードバンドの提供が困難な家、職場、施設等において、有線と同等に近い条件でブロードバンドサービスを享受
【利用シーン5】近距離にある無線機器同士が自動的に最適なネットワークを構築し、利用者が機器同士の通信を意識することなくこれを利用
【利用シーン6】移動する無線機器同士が自動的に瞬時にかつ優先的にネットワークを構築し、利用者が機器同士の通信を意識することなくこれを利用
【利用シーン7】災害等の非常時に、通信システムを選ばず、確実に必要最小限の情報のやり取りをすることが可能

 このような利用シーンを類型化しこれに基づいて検討を行ってきた。
 利用シーンに基づいて、具体的なシステムを提案公募として一般から募った。提案公募に基づいて具体化を図るために、SIGという組織を作って、システムを詳細に検討するということを行っている。最終的にはそれらのシステムがどのように導入されていくか、周波数の再配分をどのように進めていくのかということを検討していく。新しいシステムについての必要な周波数の確保のために、既存の電波システムが使いやすい周波数帯に集中しているという現状を鑑みて、どのような周波数の有効利用を行っていくかを検討した。
 現状として、携帯電話については契約数・データのトラフィック数ともに非常に伸びている。モバイル通信に必要な帯域幅、データ量は今後大きくなっていくことが予想される。無線アクセスについても、無線LAN等を中心にして増加していることから今後需要が増大していくことが考えられる。情報家電を含む省電力システムについても家庭の中に浸透しつつある状況になっており、様々な規格について検討されている。
 次世代移動通信システムは利用シーン1、2となっているが、検討に当たって高度化3G、4G、広帯域移動無線アクセスの3つの大きなカテゴリーに分けた。広帯域移動無線アクセスについては稠密なエリア展開を前提とするが、地域を限定したサービス導入を行う可能性もあると考えている。携帯電話のように全国展開ではなく、まずは、需要のある場所での展開となる。
 トラフィックの観点から携帯電話だけでブロードバンドをいきわたらせることは難しい。そういった意味で現行の3Gのシステムを補完するものとして広帯域移動無線アクセスシステムを位置付けている。広帯域移動無線アクセスについてはセルラー系のシステムと比べてエリア展開は都市部を中心として整備されると考えている。
 具体的な周波数をどうするかという問題は高度化3G、4GについてはITUの中で議論がされている。新しく広帯域移動無線アクセスをどのように割り当てていくかということがメインの議論となってきたが、2.5GHz帯が適しているということで割り当てるということを取りまとめた。新たな移動通信システムとして3G/3.5Gを上回る伝送速度、一定レベル以上の伝送速度、3G/3.5Gを上回る周波数効率を検討すべき条件としている。
 利用シーン4として、有線ブロードバンド代替システムを挙げている。有線で引くよりも無線の方が優位な箇所などで実現するとしている。有線ブロードバンドが提供されない原因を分析すると需要規模、コスト、整備、初期投資などが問題となっている。有線ブロードバンドを代替するシステムの周波数帯の要件として、①移動通信システム等に使用される見込みがない(又は周波数の地域別共用が可能な)できる限り低い周波数帯であること、②国内又は国外において、相当数の端末が既に導入されている又は導入が見込まれている周波数帯と合致することが挙げられる。
 候補周波数帯として2.5GHz帯を考えており、利用シーン1、2等の移動通信システムが周波数帯を利用しないエリアに限り、導入可能性を検討している。もうひとつの候補周波数帯として4.9GHz帯がある。キャリアセンス機能を具備することを前提として、他の無線アクセスシステムと同じく登録制の下で周波数を共用する。現在、一部の地域において既に無線アクセスシステムの登録局に開放されている周波数帯域であり、これらと同じ条件で、有線ブロードバンド代替システムを導入することが可能であると考えている。今後導入可能性のある周波数帯として1.5GHz帯がある。現在、2G携帯電話、MCA陸上移動無線に使用されているが、将来的にMCA陸上無線の内、アナログ方式のものは2007年10月1日までの利用期限を設ける。現在携帯電話による1.5GHz帯の利用は東名阪でしか利用されていないものもあるため、それ以外の地域で有線ブロードバンド代替システムの導入が可能でないかと考えている。
 3つ目の具体的なテーマとして安全・安心ITSというものがある。これは利用シーン6に該当し、移動する無線機器同士が自動的に瞬時にかつ優先的にネットワークを構築し、利用者が機器同士の通信を意識することなくこれを利用することが出来る。具体的な事例として自律型システム、車車間通信システム、路車間通信システムというものがある。自律型システムというのは、前の車との距離で衝突防止を図る単体で動くシステムで自らのシステムが相手との距離を測って衝突を防ぐ。車車間通信システムとは車と車が行う通信。前の車がブレーキを踏んだときにその情報が後ろの車、さらに後ろの車に伝わっていくことで衝突を避けることが出来る。路車間通信システムは交差点の情報等を提供することで交通の安全化を図るシステム。ITSのシステムの標準化が確定的でないため、将来的な交通の安全のための周波数需要の観点からまとめた。車車間通信システムは需要が見込めるが自分の車にシステムを搭載しても相手が同様のシステムを持っていないと効果がない、ということがあり、自律型システムなどの導入にあわせて、ということになる。周波数は自律型システムが78-81GHz、車車間通信システムはVHF帯、UHF帯等、路車間通信システムは5.8GHz帯等となっている。新たなサービスの提供に当たり、周波数需要に応じて、周波数の追加の検討を行っていく。
 次世代情報家電についてはCIAJに検討をお願いした。用途による分類を行い、映像機器間の端子間接続の用途、映像を主体とした用途、音楽を主体とした用途、サーバを主体とした用途といったように様々な用途を情報家電の利用用途として設定し、需要予測・普及予測を検討した。システムの要件としては十分な伝送帯域とQoS保証のしくみの確立、PCなどのIP機器やモバイル機器等(含む車載機器)とネットワークレベルでの相互接続性が世界中の家庭で確保可能。操作が容易であり、初期設定、機器の追加、削除、メンテナンス等が簡易。セキュアなネットワーク環境が提供可能。現在検討中の標準(例えばDLNA)との親和性。などを国際的な流れの中で検討を行っていく。最終的にIEEE802.11a/e,n(無線LAN)を使ったネットワークが適切ではないか、という結論が得られた。
 周波数としては5GHz帯を考えており、2015年を導入時期に設定、国際的な合意に基づく帯域を選定、情報家電以外のシステムとの周波数共用での実現、必要最大周波数帯幅は540MHz(ただし、無線LAN高度化技術の進展や映像符号化技術の進展等により、狭くなる可能性。)ということを考えている。
 新しいシステムに対してどのように周波数割り当てを検討していくかということと並行して、既存のシステムの周波数制限を進めていかないと、再配分を行うことが困難となってくる。例えば3~6GHz帯を主に使用する固定無線、無線標定及び衛星通信の各システムの周波数有効利用方策を検討していく。対応としては有線にしたり他の周波数帯に移るといったことが考えられる。光ファイバ等の有線系システムへの代替、他の周波数帯への移行、割当周波数帯幅の見直し、周波数割当ての地域分割によるシステム間共用、周波数の有効利用技術の活用についての検討を行う。
 今後のワイヤレスブロードバンドの実現に向けてどのような取り組みが必要かを提言としてまとめた。大きく3つのカテゴリーに分かれている。
 1つはワイヤレスブロードバンド分野における我が国のリーダーシップの確保ということで、具体的には世界に先駆けて新しいものに挑戦、チャレンジ精神とリスクマネーの供給、戦略的な標準化及び周波数の国際的な調和、技術的条件の早期作成に向けた戦略的な取組の3つを掲げている。2つめはユーザの利便性向上ということでインフラの高度化の推進と様々なサービス開発を促進するためのオープンなプラットフォームの構築、 様々なシステムに関する実験の推進、安心感、信頼感を醸成するためのセキュリティやプライバシー対策等への取組の強化に配慮して取り組みの評価としていく。3点目として周波数の有効利用ということで、周波数の再編方針に沿った周波数再編作業の着実な実施、 同一周波数帯の多様な用途への対応等、周波数の一層の有効利用を図るための制度的枠組の検討、周波数の一層の有効利用を促進する研究開発の推進していくことで周波数という限られた資源を活用していくべきということを盛り込んでいく。
 「ワイヤレスブロードバンド推進研究会」の検討結果として、大規模な社会システムが使用している周波数帯を再編の中でユーザの視点、システム提案、マーケットの需要に応じた周波数再編を進めていく。今後の課題としてワイヤレスブロードバンド分野における我が国のリーダーシップの確保、周波数の有効利用、ユーザの利便性向上といったものを取り組んでいき、最終的には世界最先端のワイヤレスブロードバンド環境の構築を目指していく。今後のスケジュールとして、具体的な議論を行い周波数の割り当てにつなげていくということになる。

質疑

真野:オーバービューを言えば、無線LANをやりたい人も、携帯電話をやりたい人も希望を聞くと2.5GHzがいいと言う。携帯電話の人たちはITUで決めた第3世代のバンドなのだからそれを守るべきだと主張するが、一方でWiMAXをやりたい人たちは時代が変わっているのだから、割り当ては必要だ、と主張している。従来に比較すると新たな選択肢が出てきたのだから検討が必要だ、という結論となった。
小泉:サービス提供に周波数が必要なら、そういう機会を与えていく、という結果になった。
真野:研究会としては方向性を答申しただけであって、今後周波数の割り当てに関しては諮問がないと動けない。メーカーが物を作って出せるまでの一連の流れの中で、通信事業者云々という話は一切入ってこない。通信事業者や自営事業者が使ってよいのかという話は一切入ってこない。どの周波数がどこに割り当てるかという事は一切決定されない。

原:無線LANが混雑して混信するようなことは起きないのか?
真野:無線LANは混信しないが、4.9~5GHz帯の場合、ユーザの数によって使える帯域が限られる。

山田:ユーザの利便性の向上とあるがユーザからのフィードバックが無いのはなぜか?離島にでも実験島を作って、新しい実験をやって、というような電波特区のようなものを使ってそれを元にした政策を行うようなものはどうか?
小泉:実証実験を、期間を定めて特定実験局免許という形でやっている。
山田:それでは既存のものに影響を与えないようにしなければならないといった付帯条件がついてしまう。自由に実験できるような環境を作ってみたらどうか?
真野:既設のものがあった場合は出来ないだろう。サプライヤーのメリットばかりになってしまい(そこに住んでいる)住民の理解は得られない。
山田:大きな企業が入ることによって固定資産税が入るとか。ユーザを1万、10万人規模で巻き込んで実験して本当に利便が向上するような実験をするのが良いと思う。
真野:それは今の特定実験局だと思う。開設手順もものすごく簡単になった。問題はそれを誰がやるのかというところだ。
小泉:モニターがある程度集まるところでやらないとフィードバックが返ってこない。

原:もっと下の周波数帯が取り上げられていないが。結局はそこに既得権益が集まっていて、再配分に際して一番問題になるのでは?
小泉:VHF帯になってくるとこれからニーズの開拓をしていかなくてはならない。その上になると地上テレビ放送の周波数帯になってくる。そこを圧縮して使えるようにしていく。それより上は細切れに使っている状況であるので地上デジタル放送で空いてくる周波数と携帯電話の周波数をうまく整理して700MHz帯と900 MHz帯を併せて移動通信の再編を進めていきたいと考えている。
真野:今回の報告書は具体的なシステム提案からSIGを作ったが、民間からの革新的な意見が出なかったことが悲しい。国際競争力というならば、今本当にやるべきはローバンドの開発だろう。
小泉:空いた周波数帯をうまく組み合わせていくことで新たなシステムを構築していく可能性は将来的に検討していくべきだ。
真野:国際的な動向を気にしすぎている。日本発のシステムをどんどん推していくべきだ。

山田:4Gは、世界の動向を見極めた方がいい。貧しい国々は最初の通信手段を5年、10年で入れ替えるようなことはしない。ずっと使い続けていく。これはヨーロッパでも同じことが言える。実際ヨーロッパで3Gが始まっているといってもGSMにちょっとオマケがついている程度。日本のCDMAのようなものはほとんどやっていない。PDCで孤立した日本は次世代でも孤立している状況にある。そんな状況で4Gなんてやるはずがない。一つだけ評価できる点は4Gで使うからといって既存の周波数利用者をどかして、他の利用方法へと回すということが出来ることだけ。本当に4Gをやるといって研究費をつぎ込んだりすることは国際的に見ても愚かなことだと思うが。
小泉:3Gと全く違う技術かということは今の段階では全く決まっていない。広帯域を想定しているので、高度化3Gなどのシステムが広帯域で出来ればと考えている。4G自体が国際的に協調した周波数帯を決めていく中で取り決めを行っていく中での帯域なので、高度化3Gで使われていくということもありうる。
真野:世界に向けた電波政策のリーダーシップを取るという意味で、「4Gはやめる」といった発言はするべきだ。クアルコムなどの大反対は確実だが、一方でインテルなど賛成する企業もあるだろう。
山田:ユーザの動向をみるべき。以前書いたシナリオは完全に崩壊している。通信のインフラは相対的に値段が高いため一度導入したら変えたくないもの。世界共通4Gとかいう幻想は捨てるべきだ。日本の携帯電話キャリアとベンダーが密着して安価に端末を売って、後から携帯電話キャリアからお金をキックバックしているというシステムを維持したままだからヨーロッパに持っていけない。

会場:世界最先端のとはどういった意味で使っているのか?
小泉:これは一番という意味ではなく最高レベルという意味。利用、サービスの面で日本が世界のなかで進んだ環境を設備していきたいと考えている。e-Japan戦略の中で最初に「世界最先端」という言葉が登場したと思うが、それに関して定量的な指標はなかったと思う。ただ戦略の進捗を評価するための定量的な数字の検討は行っていると思う。

岡島:IPモバイルがなぜ参入出来たのか?
小泉:事業的に大きな資金をスポンサーから調達出来たからでは。

池田:電波の有効利用という観点から見れば、政府が変調方式や用途まで決めるのはやめ、互いに干渉しないで共存できればいいという割り切りでやっていくべきだ。日本の電波割り当てはITU様様で上から下まで全部ITUの決定通りに出し、業者にはそれ通りじゃないと認可しないというような状況。オプションを広げるためにもITU至上主義は変えるべきだと思う。
真野:割り当ての技術的要件の少なさによって電波政策がフレキシビリティーを持つか持たないかが評価されると思う。
原:世界標準が無いと問題ではないのか?
小泉:日本の物を世界に持っていってそのまま使えるという環境を整えていくことは重要。
岡島:なぜ規格争いで日本案を成立させることが、日本の国益になるのか?
小泉:日本の技術が採用されることで特許の面などで有利。

会場:2003年の10月に再編ビジョンが出されたが、割り当てに関して再編に向けてどういう進み方をしたのかということが疑問。
小泉:周波数の需要とそれに対してどこの帯域をどうやって搾り出すかの方針を示したもの。将来的なものに関して示したものに過ぎない。今回の検討というのは具体的にどのようなシステム導入が想定されるかというものを検討した。
真野:利用シーンに対して具体的な方法が示されていたがそれは違うと思う。一意的に今の時点の技量・知識で決めてしまうのはナンセンスだと考えた。

第8回「NHKをどうする」

概要

小泉改革の総仕上げの一環として、これまで手のつけられていなかった放送分野についての改革が始まりました。竹中平蔵総務相の私的な諮問機関である「通信と放送の在り方に関する懇談会」では、「通信と放送の融合」の進む技術革新に対応する改革が論じられ、その検討事項の一つとして、NHKの経営形態があげられています。この背景には、受信料の不払いが全世帯の3割に達し、2005年度の受信料収入が史上初めて減少するなど、深刻化するNHKの経営危機があります。

今回のICPFセミナーでは、NHKのプロデューサーをつとめられた深瀬槇雄さんを招き、NHKは民営化すべきか、受信料制度は必要か、チャンネルは多すぎるか、などNHKをめぐる問題を考えます。

スピーカー:深瀬槇雄(文教大学情報学部教授)
        池田信夫(ICPF事務局長)
モデレーター:山田肇(東洋大学教授)

日時:3月23日(木)18:30~20:30
場所:東洋大学白山キャンパス 5号館5202教室
   東京都文京区白山5-28-20
   地下鉄三田線「白山」駅から徒歩5分
   地下鉄南北線「本駒込」駅から徒歩5分
入場料:2000円

第9回「NTTをどうする」

概要

1996年に郵政省(当時)とNTTが持株会社方式による組織再編で合意してから、10年がたちました。ドッグイヤーでいえば、70年。この間に情報通信業界の状況は、大きく変わりました。それを受けてNTTは昨年、事実上の「再々編」計画ともいえる中期経営戦略を出しました。

これに対して、競合他社からは「独占時代への逆行だ」との批判が強く、ソフトバンクはインフラを「水平分離」して通信各社が共同出資する「ユニバーサル回線会社」構想を提案しています。

今回のセミナーでは、このソフトバンク案を提案した嶋聡さん(元民主党「次の内閣」総務相)と、NTTのOBである林紘一郎さんの討論によって、次世代ネットワーク時代のNTTのあり方を考えます。

スピーカー:嶋聡(ソフトバンク社長室長)
       林紘一郎(情報セキュリティ大学院大学副学長)
モデレーター:池田信夫(ICPF事務局長)

日時:4月27日(木)18:30~20:30
場所:「情報オアシス神田」
    東京都千代田区神田多町2-4 第2滝ビル5F (地図)

入場料:2000円

レポート

講演要旨

情報通信産業のような巨大な投資が必要な産業は独占されやすい構造になっている。NTTは1999年に持ち株会社による民営化が行われたが、結局現在も95%の回線はNTTが独占している。私も昨年11月からソフトバンクに入り、この情報通信産業をどうにかしようと取り組んでいる。

IP懇談会で東洋大学の松原聡さんに質問したところ、「放送と通信で第2の道路公団は作らない」と仰っていたが、我々の案は第2の道路公団を作ろうという案ではなく、民間主導で行おうという提案である。また、最近公表されているNTTの中長期経営計画を見ると、NTTの巨大化に繋がりかねないと感じ、危惧している。

「国民のために」のコンセプトの元、新しい概念が必要になっている。平等な情報アクセスは国民の基本的権利であり、過疎地や情報弱者の切捨てがあってはならない。また、現在の地域間格差の解消を図らなければならない。IT新改革戦略では「2010年までに光ファイバーなどを整備し、ブロードバンドゼロ地域を無くす」とされているが、自民党の片山さんも地元の講演で遅れを認めている。

現在、光回線では企業間の競争が進んでいないが、ADSLは基盤インフラが整っていたことや、設備開放によってサービス競争が進展したため、今では日本はブロードバンドが世界一安い国になった。これからは光ファイバーでも競争を促進し、次世代ブロードバンドを国民全員に平等に、そして安価に提供することが必要。しかし、ADSLではNTTに次いで僅差で2番手になっているソフトバンクが、光ファイバーではグラフにすら入れないほど、NTT東西が独占している。

今のアクセス通信網はいったい誰のものなのか。国民のもの?それとも企業のもの?憲法第29条1項には「財産権は、これを侵してはならない」とある。すると、これまで電電債や施設設置負担金などにより構築されてきた設備、独占的利益による設備、政府により保有・保護されてきたNTT株式などの状況を考えると、公共性の大きい日本全国6000万の回線は公のものなのではないか。

今の光回線の状況は、例えば宅配業者を例にして言うと、ヤマト運輸と郵便局と佐川急便があった場合、それぞれ1社ごとにお客さんの元に道路をひこうと言う状態。また、サービス事業者を変えると、引込み線を切ってから、新しい事業者が引込み線を設置する必要がある。これは非常に馬鹿馬鹿しい話だ。

今のNTT中期経営戦略では、2010年度には光サービスを3000万回線ひくというスケジュールになっているが、これでは政府のIT新改革戦略と大きな差があり、国民に平等なインフラを供給することは出来ない。全地域へ平等に光サービスを整備するには、民間でユニバーサル回線会社を設立する必要がある。そして、NTTを資本分離して顧客データベースも分け、一般の民間企業と競争できるようにすることが重要。

5年間で6000万回線に光ファイバーを敷設した場合、回線光化総投資額は6兆円と試算している。6兆円を20年で減価償却し、債券発行による資金調達を年利2%で元利均等償還で行った場合、20年経過時に元本、金利が完済となる回線単価水準を算出してみると、光ファイバー1回線で、月額約690円でできる。月額690円の光サービスを行えれば、6000万回線光化は実現可能になる。

よく光ファイバーは高速道路でメタル線は一般道だといわれているが、光ファイバーは舗装されていない道路を舗装道路にするということだと思う。これからの企業は啓蒙された自己利益を追求することが必要。21世紀の国際競争力と国民の未来を作っていきたいと考えている。

情報セキュリティ大学院大学副学長 林紘一郎

「この資料は前回のフォーラムのときと同じ資料なので、「なんだ、学者のクセに進展していないのか」と思われるかもしれませんが、「学者なので言うことが一貫している」とご理解いただければと思っております。

光ファイバーは永久に使われると思っている人がいるが、他にも様々な技術があり、日々進化している。
政府が1つの技術を決めて進めるべきではない。
光サービスのためのユニバーサル回線会社を作るのは、第2のNTTを作るようなもの。
もっとナショナルセキュリティーを大きく問題にすべきだ。

第10回「新聞の特殊指定を考える」

概要

公正取引委員会は今、独占禁止法で「特殊指定」となっている業種の見直しを行っています。なかでも大きな論議を呼んでいるのが、新聞業界の指定です。これは値引き販売や「押し紙」などを禁じる規定で、公取委は「新聞には再販制度があるので、特殊指定は必要ない」としています。

これに対して、新聞業界は一致して反対を表明し、「特殊指定がなくなると戸別配達網が崩壊し、ひいては活字文化の危機をもたらす」と主張しています。今回のセミナーでは、この特殊指定をテーマにして、マスメディアやジャーナリズムのあり方を考えます。

スピーカー:後藤秀雄(日本新聞協会 経営業務部長)
モデレーター:原淳二郎(ジャーナリスト)

日時:5月25日(木)18:30~20:30
場所:「情報オアシス神田」
    東京都千代田区神田多町2-4 第2滝ビル5F
入場料:2000円

第11回「Googleの考え方」

概要

世界最大の検索エンジン、Googleについて、日本でも関心が高まっています。最近は、動画検索や地域検索など、新しいサービスを増やし、書籍をデータベース化するプロジェクトも始まっています。他方では、Googleを含めた米国産の検索エンジンに対抗して日本政府が「国産検索エンジン」をつくろうという話も出ています。

このように大きな注目を集めるGoogleですが、その実態はあまり知られていません。6月のセミナーでは、Google日本法人の村上社長をお招きして、Googleが何を考えているのか、どんな風に考えているのか、などGoogleの本当の姿について、お話をうかがいます。

スピーカー:村上憲郎(Google日本法人社長)
モデレーター:西和彦(ICPF代表)

日時:6月29日(木)18:30~20:30
場所:「情報オアシス神田」
    東京都千代田区神田多町2-4 第2滝ビル5F

入場料:2000円

第12回「進化を続けるP2P」

概要

ユーザーのコンピュータを直接むすんでファイルを転送するP2P(Peer-to-Peer)システムは、1999年にファイル交換ソフトNapster でデビューしましたが、レコード業界などの訴訟によってサービスは停止に追い込まれました。日本でも、Winnyの利用者や開発者が逮捕され、一時は P2Pの商用化はむずかしいかと思われました。

しかし今、YouTubeなどによって映像配信が注目を浴び、世界的にもP2Pソフトを利用して映画などを配信する試みがふたたび始まっています。日本でも、Winnyの開発者である金子勇さんを技術顧問として、P2Pのノウハウを反映させた技術SkeedCastが開発され、そのサービスが8月から公開されました。

P2Pは、多くのピアで映像伝送の負荷を分散でき、キャッシュによって効率的な伝送を可能にするという点でも、次世代の通信インフラになる可能性があります。9月のセミナーでは、金子さんをおまねきし、WinnyからSkeedcastへの進化の過程と、P2P技術の将来の可能性についてお話をうかがいます。

テーマ:「進化を続けるP2P」
スピーカー:金子勇(㈱Dreamboat技術顧問)
モデレーター:池田信夫(ICPF事務局長)

日時:9月28日(木)18:30~20:30
場所:「情報オアシス神田」
    東京都千代田区神田多町2-4 第2滝ビル5F

入場料:2000円

第13回「ソフトバンクモバイルの戦略」

概要

10月からボーダフォンはソフトバンクモバイルに社名変更しましたが、それに先立ち9月1日付けで副社長技術統括兼CSO(最高戦略責任者)に松本徹三さんが迎えられました。米クアルコム社の上級副社長を務められた松本さんは、世界の携帯電話業界のリーダーのひとりとして長年活躍されています。ボーダフォンはJ-フォン時代以来、3位に甘んじてきましたが、今月下旬から「ナンバー・ポータビリティ」 が始まるなか、ソフトバンク傘下でどういう戦略で巻き返すのか、その秘策を松本さんにうかがいます。

スピーカー:松本徹三(ソフトバンクモバイル副社長)
モデレーター:池田信夫(ICPF事務局長)

日時:10月26日(木)18:30~20:30
場所:「情報オアシス神田」
    東京都千代田区神田多町2-4 第2滝ビル3F

入場料:2000円

第14回「経済産業省はWeb2.0にどう対応するか」

概要

最近、官民共同で検索エンジンの研究開発を行おうという「情報大航海プロジェクト」が設立され、「日の丸検索エンジン」として話題になっています。 Web2.0と呼ばれるインターネットの新しい動きに日本企業が立ち遅れていることは明らかですが、これによって日本は立ち直れるのでしょうか。このような政府主導の産業政策はもう時代遅れだという批判もありますが、経済産業省は日の丸検索エンジンというのは誤解だといっています。

日本のIT産業を活性化するために政府は何をすべきなのでしょうか? また何をすべきでないのでしょうか? 経産省の政策の真の狙いはどこにあるのでしょうか? 11月のセミナーでは、経産省の久米孝さんをお招きし、IT産業と政府の役割について議論します。

スピーカー:久米孝(経済産業省 商務情報政策局 情報政策課 課長補佐)
モデレーター:原淳二郎(ジャーナリスト)
日時:11月30日(木)18:30~20:30
場所:「情報オアシス神田」    
    東京都千代田区神田多町2-4 第2滝ビル3F
入場料:2000円 ICPF会員は無料(会場で入会できます)

第15回「Skypeが変えるインターネットテレフォニーの世界」

概要

グローバル P2Pテレフォニーカンパニー、Skypeがこのほど日本にオフィスを開設しました。バージョンも3.0にアップデートされ、フュージョン・コミュニケーションズと提携して050発信を可能にするなど、日本でのビジネス展開も活発化しています。通信事業者やISPもIP電話サービスを開始し、競争が激化していますが、そのなかでSkypeはこれからインターネットでのコミュニケーションをどう変えようとしているのでしょうか。今月のセミナーでは、ジェネラルマネジャーの岩田真一さんにお話をうかがいます。

スピーカー:岩田真一(Skype日本オフィス ジェネラル・マネジャー)
モデレーター:池田信夫(ICPF事務局長)

日時:1月24日(水)18:30~20:30
場所:「情報オアシス神田」
    東京都千代田区神田多町2-4 第2滝ビル3F

入場料:2000円

第16回「インターネットの有害情報と表現の自由」

概要

ユーザー参加型の「Web2.0」といわれるサイトが増えるにつれて、有害情報や迷惑行為の被害も広がっています。2ちゃんねるだけでなく、ウィキペディアやミクシィでも名誉毀損やわいせつ画像が問題になり、先日は大量の児童ポルノ画像をホームページで公開していた小学校教師が逮捕されました。

こうした問題に対処する民間団体として、財団法人インターネット協会に「インターネット・ホットラインセンター」が昨年、設立されました。その集計によれば、6ヶ月間に通報された有害情報は24000件にのぼります。他方、こうしたサイトを取り締まることによる表現の自由の侵害を懸念する向きもあります。

今回のICPFセミナーでは、インターネット協会副理事長の国分明男さんをまねき、インターネットのセキュリティのあり方、表現の自由はどこまで守るべきなのか、匿名性はどこまで制限されるのか、といった問題を考えます。

スピーカー:国分明男(インターネット協会副理事長)
モデレーター:原淳二郎(ICPF理事)

日時:3月5日(月)18:30~20:30
場所:「情報オアシス神田」
    東京都千代田区神田多町2-4 第2滝ビル5F

入場料:2000円

第17回「NGNを現場で見てみよう」

概要

NTTがネットワークを電話網からIPに全面的に移行する大プロジェクト、NGN(次世代ネットワーク)の実験が始まりました。そのコンセプトは明確ですが、具体的なサービスのイメージがあまり明らかではありません。NGNによって何が新たに可能になるのか、ユーザーにとってどんなメリットがあるのか、料金は安くなるのか、など疑問もあります。

そこでICPFとしては、初めての試みとして、NTTの研究所にツアーを組んで、そのサービスの具体例を見学することにしました。現地集合で、1時間ほどNGNの技術展示などを見学したあと、30分ほど質疑応答を行い、その後、懇親会を開きます。

日時:4月17日(火)16:00~18:00

場所:NTT情報流通基盤総合研究所 玄関受付に16時に集合
   東京都武蔵野市緑町3-9-11

会費:懇親会費として3000円(希望者のみ)

第18回「情報アクセシビリティをビジネスチャンスに」

概要

情報社会から高齢者や障害者が排除されないように、情報通信機器・サービスのユーザインタフェースを改善する、情報アクセシビリティの実現に向けて世界は動いている。すでにアメリカは連邦政府調達について情報アクセシビリティを必須要件としている。ヨーロッパも公共調達の要件とするように動き出した。

情報アクセシビリティとは何か、世界はどう動いているのか、それをビジネスチャンスにするとはどういう意味なのか。セミナーの前週にアメリカ連邦政府で開催される、情報アクセシビリティ要件改定のための諮問委員会の動向を含め、本講演では最新の情報を提供する。

スピーカー:山田 肇(東洋大学経済学部教授 ICPF事務局長)
モデレーター:池田信夫(ICPF代表)

日時:5月29日(火) 18:30~20:30
場所:東洋大学・白山校舎・5号館 5202教室
    東京都文京区白山5-28-20

入場料:2000円

レポート

「情報アクセシビリティをビジネスチャンスに」

今日話すことは情報アクセシビリティをビジネスに生かしてはどうかということ。今日は二種類の人々がいる 、情報アクセシビリティのプロと、まったく知らない人。だから最初は基本を話す。

○社会の情報化は進展
インターネット(ブロードバンド)は世帯普及率50%を超え、さまざまな用途で利用が拡大している。政府でも 民間でもネット利用はごく当たり前になっている。

○恩恵にあずかれない人々にどう対応するか
私たち全体の問題でもある。包括的電子行政サービスを利用できない人々の為に既存システムを維持するための二重コストの問題。これは税金の問題なので、恩恵に預けられない情報弱者と呼ばれる人々だけの問題ではなくなる。

○高齢者・障害者が情報弱者にならないためには?
この議論は日本については2000年ごろから社会的関心が高まっているが、情報アクセシビリティという言葉自身がなじめていない人が多いことが現状

○情報アクセシビリティの四つの側面
画面が見えない、音声案内が聞こえないため利用できない→利用可能性(狭義のアクセシビリティ)
知識がない →リテラシー
資金がない→購入可能性
使い勝手が悪く利用できない→使い勝手(ユーザビリティ)

国連では情報アクセシビリティは人権の一環と認知しているが、いざ話題にしたときには、発展途上国ではその知識とコストをどうするのかという問題になる。アメリカではユーザビリティが論じられることが多く、欧州では言語が相互に理解できないことが問題となる。本日の内容は、一つ目の狭義の情報アクセシビリティについて。

○狭義の情報アクセシビリティ問題発生の理由
企業の製品が身体機能の能力の限界線(資料参照)を超えると、開発コストが高騰するが、そこではR&Dコストよりも回収コストが下回る状況になる。経済的に不合理なので、企業は限界線を超えた開発を行うインセンティブがない。政府は支援技術製品の開発や購入に補助金などの予算を使わざるをえない。いかにして限界線を左にスライドさせるか。

○そもそも想像できない
高齢者・障害者のニーズは多様ですべてのニーズの把握が困難である。情報機器の場合デザイナーが若いことが多く、障害や高齢に遠い位置にいる場合、利用状況が想像しにくい。限界線を左に動かすためにはさらなる努力が必要。
そこに対して技術基準を示すことは有用で、以下の三点の価値。情報アクセシビリティのニーズを的確に示す。ニーズに優先順位をつける。若いデザイナーを教育する。


○JIS X8341シリーズの制定
8341→やさしい の語呂合わせ。共通指針・情報処理装置・ウェブコンテンツ・電気通信機器・事務機器の五つからなる。自治体Webサイトの情報アクセシビリティなどはこの規格の影響下にある。

○情報アクセシビリティ標準を公共調達に利用
準拠することを義務付けることで企業に強制。アメリカではすでにそう動いている。欧州では全員参加の情報社会を標榜し、欧州委員会の資金を利用し、欧州の標準化三団体が情報アクセシビリティ標準の作成に動き出す。日本では応札時に準拠することを用件として記載することになっている。

○公共調達での要件化の意義
要件を満たすと、公共調達コストが増加する可能性。しかし、公共調達のコストが増加したとしても政府にとっては社会福祉のコストが減る。
ex)情報通信機器がしゃべるようになった。音声合成のLSIがどこでも組み込まれるようになったが、コストが急騰しているわけではなく、背景には音声合成のLSIのコスト低下。情報通信機器は開発以降のコストが劇的に低廉化されることがありうる。

○アメリカでの改訂作業
改定されれば要件はより厳しくなる。今まで視覚聴覚はカバーされていたが認知障害はカバーされていなかった。リハビリテーション法が戦争で負傷した人々の雇用の補償という背景で生まれており、認知障害になる可能性が低いことから今まではカバーされてこなかったもの。

○去年9月に最初の会合
01年以降の技術進歩を取り入れたい。2001-2006に登場したものでもっともショッキングなものがiPod。音楽はレコード店の購入からネットワークでの購入に。音楽を聴くことは視覚障害者にとっての大きな楽しみの一つ。iPodの操作を目を瞑って操作することが難しい。→ 技術進歩をどのように捕らえるか?
今回は、アメリカにしては珍しく、情報アクセシビリティの技術基準は世界的な発想を取り入れたい という動きに。

○TEITAC(通信・電気・情報技術に関するアドバイザリの為の小委員会)が設置
アメリカ、オーストラリア、カナダ経済省、欧州、日本からの代表で構成。改訂案の調整完了は08年秋まで。

○日本の戦略
日本の消費者がアメリカに行っても困らない、日本の企業がアメリカに輸出しても困らないもの。
このため、アメリカの独自企画の採用を牽制、国際整合性に動いた段階で日本の規格を売り込む。

○日本規格の国際化
共通指針ISOでまもなく完了。情報処理装置JTC1での審議が開始予定。ウェブコンテンツについてはW3Cでの規格作成に貢献する。W3Cが想定しない要素として、「ルビ情報を付加すること」など。
電気通信機器に関してはITUで標準化済み。事務機器JTC1で審議が開始予定。

○TEITAC 07年 五月の会合
今まではテレビやビデオファックスなど製品ごとになっていたものを、製品群で取り扱うことが決定→新製品が生まれても対応できるものに。
これらの基準において、経済的なインパクト、テスト可能性についての言及、関連する国際基準がどこにあるか明記することになった。

○なぜビジネスチャンスなのか?
日本は高齢化の先進国であり、市場テストに最適である。消費者の厳しい声に触れる多くの機会がある。すでに関連の技術を多く有している企業が多い。日本企業のトップは高齢者が多く、トップが問題を理解しやすい。

○まとめ
公共調達の力を利用する方向に各国は動いている。技術基準を決める政治プロセスに日本も参加している。日本の高齢化先進国、日本で成功した機器サービスは世界展開のチャンス。情報通信産業に特徴的なFirst Mover's Advantageが目の前にある。

質問:

Q:基準が特許と結びつくケース
→ 代替可能な技術の採用。それに特許があるから独占する、ではなく、自社の特許はお金さえ払ってくれれば自由に使ってくれればいい、とオープンなケースが多い。

Q:高齢者にとっては情報機器が使いにくいし、アクセシビリティ以前の問題が多かった。それらの問題を飛び越えた機器が登場する段階になってきたということか
→ パソコンなどでもHELPのオンライン表示の工夫などの取り組みがでてきている。この問題は日本だけでなく、どの国においても問題。ただし、PCキーボードの問題は、日本語との相性もあり難易度を上げている一要因に。

Q:iPodはどうなる?
→ 政府利用のものについては調達されなくなる

Q:お役所はPDFが好きだがアクセシビリティの観点でどうか?
→ PDFは、書き出す(変換する)人の設定・配慮しだいで使い勝手はよくも悪くもなってしまう。問題意識の薄い人が操作すると発生する問題であり、「気づき」の問題。今日の講演をまとめると、社会として情報アクセシビリティに気づこうということだ。

第19回「政府の知的財産戦略」

概要

先ごろ政府は「知的財産推進計画2007」を発表した。この計画の中でかなりのページが割かれている、著作権の扱いについて、知的財産戦略推進事務局の大塚さんに解説していただく。
 デジタルコンテンツの流通促進、IPマルチキャスト放送へのコンテンツ流通の促進、違法複製されたコンテンツの個人による複製問題、ネット検索サービスに係る課題などについて、政府がどのような方針で臨もうとしているか、最新の情報をうかがう。

スピーカー:大塚祐也(内閣官房 知的財産戦略推進事務局 参事官補佐)
モデレーター:山田肇(ICPF事務局長・東洋大学教授)

日時:6月26日(火) 18:30~20:30
場所:東洋大学・白山校舎・5号館 5202教室
    東京都文京区白山5-28-20

入場料:2000円

レポート

政府の知的財産戦略
講師:大塚祐也 知的財産戦略推進事務局

知的財産立国への歩み(資料P.3)

 政府では毎年、知財戦略を5月から6月にかけてまとめて発表している。今日は最新の2007についての発表。
 発端は小泉首相が国際競争力の柱として知的財産を据えることとなり、本部が政府の中に設置されたことによる。
 最初の三年間を第一期とし、基本的な制度設計を行った。現在(2007年)は第二期の二年目にあたる。

知的財産戦略本部(資料P.4-6)

 仕事としては計画の作成実施、関係省庁の総合調整を行っている。

知財戦略の推進体制(資料P.7,8)

 専門調査会を二つ作り、そこで具体的な活動を行う。知的創造サイクル専門調査会と、コンテンツ専門調査会。これらからの報告書をとりまとめ、計画としてとりまとめる。今日の話は後者について。
 知的財産戦略本部は各省庁に横断的に被さるように構成されている。各省庁の宿題を設定し、実行するのは各省庁、という構図。事務局は20数名で、各省庁からの出向と、民間からの数名の出向で構成。
 実際の実権は各省庁にあるが、問題をあぶり出すために、問題意識を刺激することが仕事。形式主義や事なかれ主義ではやってはいけない。

これまでの主な成果(資料P.9)

 4年間で30本の法律を成立させてきた。

知的財産推進計画2007の概要(資料P.11,12)

 内閣府の中にイノベーション25という組織が設置されている。また内閣官房ではアジアゲートウェイ構想など、アジアの活力を取り入れ日本の魅力を発信する方法の検討も行われている。
 どちらもコンテンツ、知的財産が強く絡むので、知財本部の動きと連携して動きをとりまとめる形となっている。

コンテンツ産業の現状と課題(資料P.14)

 コンテンツ産業の規模は13.6兆円、自動車産業が20.8兆円。それらに比べてもひけはとっていない。

市場規模及び輸出入(資料P.15-17)

 しかし、GDP比で見ると、米国におとり、世界平均にも至っていない。海外の売上高でみても、日本は極端に低い。映画を思い浮かべれば実感がわくと思う。
 日本にはまだ潜在力があるのではないか?
(質問・コメント)アメリカを除けば日本は平均以上。コンテンツ産業強化などと政府が旗を振る必要はないのではないか。

制作現場の実態(資料P.18-19)

 切り口が変わるが、テレビ現場の制作実態で見ると、大半が中小企業によるものとわかる。契約条件における問題などにより、アニメでは年間収入300万年未満の者も多く、厳しい状況の中で行われていることがわかる。

目指すべきコンテンツ大国のイメージ(資料P.22-24)

 国民が多様な環境から時間と場所を気にせずに利用する(ユビキタス環境の実現)。自らも創作活動・参加を行う(双方向性、Web2.0等のインタラクティブ要素)。
 もともと日本人は創作活動への参加が好きだと考える。カラオケなどは80年代から市場が立ち上がっているが年間8000億にのぼる売り上げ、音楽CD市場よりも大きい。
 時代の流れも参加型、自己表現に価値を見いだす方へと移ってきているのではないか。
 人材育成。3Dを作る数学の世界、理系の才能が必要となるが、そうした技術をつかってアートなものを作るにはそれとは別の才能が必要。海外へと出たり、日本へと入ったりして、日本に蓄積されていくことが肝心。
 アーティストの村上 隆の『芸術企業論』を引用したい。そもそもなぜ海外で日本のアーティストが成功しないのか。それは、海外のルールを知らないから。日本のアーティストはルールを学ぶ姿勢が足りない、かつ、日本のアーティストはお金に対する欲望が足りない。
 映画『リング』などのプロデューサーは契約の重要性についてといている。日本のヒット後、ドリームワークスにリメイク権を100万ドルで渡したところ、世界での売り上げが4億ドルとなったが、最初のリメイク権料以外、一銭も入らなかった。グローバルな市場においては、クリエーターやプロデューサーだけでは成功できないため、エンタメロイヤーを輩出する必要がある。
 契約。日本のドラマの契約は主役と準主役クラスしか契約書を交わさないらしい。知の創造サイクルの観点では、創造したものがしっかりと保護されなくてはならない、保護されたものが活用されなくてはならない、それによって新たな創作、という流れが生み出されなくてはならず、これらが実現されるためには、契約書が重要。
(質問・コメント)報酬を支払うという行為をとるときに契約も締結するのを忘れないようにすれば、自然とこの問題は解決するはず。何で問題として指摘されているのか理解できない。
 ビジネスチャンス。単に世界に進出するという発想だけでは駄目で、世界のものを受け入れて、進出する。経産省が力を入れている「ジャパン国際コンテンツフェスティバル」はアニメ、映画などさまざまな行事を一時期に行うことで、別のイベントへの誘引をはかっている。
 いろいろなお金が流れ込むための仕組み作りの重要性。それらの仕組み作り上で、クリエーターに適正な報酬がおちることを重点に。
 海賊版の撲滅。海賊版はいくら売れてもクリエーターに還元されない、防止措置を提言する。
 教育。創造性をはぐくむ、基本的なモラルの向上の為の、早期の段階からの教育が必要。

成長の阻害要因(資料P.25)

 阻害要因は様々。(1)産業界の海外戦略の欠如。ゲーム業界だけが輸出超過、他は海外戦略が欠如している、特に放送。放送は国内向けで充分商売になっているので、海外を見るインセンティブに欠ける。放送は二次利用が前提となっていない。だが、金額ベースでコンテンツ市場に類する7割はテレビ業界がらみ。お金や才能がつぎ込まれているが、この分野が「使い切り」な点はもったいない。
 (2)時代の変化に対応できない制度と業界慣行。契約が出来ていない問題、本当の意味での創作者に還元されていないのではないか。
 (3)将来に目を向け、新しい産業や収益源を見つける視点の欠如。iPodや(違法なやりとりを除外した、共有サービスとしての)YouTube等の仕組みは日本では出てきにくい。
(質問・コメント)知的財産推進計画は産業振興策だが、アメリカと比べると一周遅れにしか見えない。そんな計画は無駄ではないのか。

推進計画2007の重点項目(資料P.27-31)

 推進計画2007の目的は、数多くの障害を取り除くこと。第四章はすべてコンテンツ周りの話となっている。
 デジタルコンテンツの流通。二年以内に法制度を整備。新聞などでかなり報道がされているが、実際には、内容についてはこれから詰めていくところで、具体的なことは決まっていない。登録制度をキーワードに、権利内容、権利の窓口を作り、流通を促進する。登録するだけだと足りないので様々な効果をつける。たとえば、任意の登録(報酬請求権)、非親告罪化、監視組織の設立などの「アメと鞭」がアイデアとしてあがっているが、提案者ごとに微妙に意見は分かれる。登録についてみても、仕組みのアイデアに幅がある。契約だと現実に立ち上がらないので、税金などの優遇などの措置も検討。すべて検討段階であることに留意してほしい。
(質問・コメント)文藝家協会やJASRACの意見で突然方針が後退したのではないか。(講師は)それは事実ではないと否定。
(質問・コメント)新しいコンテンツ流通のしくみが出来上がるたびに著作権法に条項を付け加えるのが、そもそもの欠陥。デジタル時代の著作権を一から考えるべき。(講師は)デジタルコンテンツの流通法にはそのような意図がある。流通の条件を自ら宣言できるようにするのが特徴である。
 違法サイトからのダウンロードに関して、現在は私的複製で違法にはならないが、私的複製の範囲を見直す必要性があるか検討。これは批判が殺到した項目で、たとえば、違法サイトが本当に違法かどうか、わかりにくい事が指摘されている。コンテンツの利用を萎縮させてしまう、という危惧から、表現の自由の侵害、検閲になる、等数多くの批判がある。方向性としては、刑事罰については科さず、民事救済におちていく可能性は高い。
 権利者不明のコンテンツの利用。アーカイブなど、権利者が見つからない場合の死蔵コンテンツの問題が発生する。権利者が分からないケースにしても数多くあり、俳優の居場所がわからない、ドキュメンタリの場合、出演者が誰か分からない、など、権利処理が行えない問題。具体的なアイデアとしては67条の「相当な努力」の軽減。しかし67条は著作者であり隣接権者については規定されていない。国際条約との関係で難しいが検討する。米国ではオーファンワークスアクトのアイデア(米では廃案になった)。著作権者の不明な場合のコンテンツの利用として、三倍額賠償、侵害は民間救済で、差し止め請求を行えないようにする、等が提案された。文化庁で今後検討予定。ただ、文化庁の範囲を超える「肖像権」について検討の余地を残す。アイデアとしては第三者機関を作って民間努力で改善する方法。
 IPマルチキャスト(P.28の図参照)。知財推進計画2006での中心、昨年秋の法改正で同時再送信に限って許容。IPマルチキャストは放送と通信の中間的要素をもち、ルーターから複数のアドレスに送信する仕組みで、インターネット上に複数の同じ情報が流れている状態であり、端末からのリクエストに最も近い場所から送信されるため、自動公衆送信と比べ常にサーバからデータが流れ続けていることが特徴である。これが有線放送であるか、自動公衆送信になるのかが問題、という点が発端。有線放送と自動公衆送信となった場合では、権利処理が異なってくる。レコード制作者等にとっては報酬請求権か許諾権かが最も大きな差異。
 IPマルチキャスト事業者にしてみればP.30については自主放送については一番左、再送信については一番右としてほしい。法改正では、同時再送信に関しては、一案右の扱いとした。ただし、一番右の権利なし、はあまりではないか、ということで、これは報酬請求権を与える形として、CATV、IPマルチキャスト業者にも負担を求める。IPマルチキャストは自動公衆送信権の許諾権を制限する形。
 もう一つの大きな問題は自主放送について。IPマルチキャスト業者自らが制作し放送する場合の権利処理は自動公衆送信権という位置づけになっている。権利処理コストでハンディを負ったままであるのは問題ではないか。
(質問・コメント)国会テレビは平然と過去のコンテンツを自動公衆送信している。国会が違法行為をしている状況。国会が問題なのではなく、著作権法がおかしいのだ。
 ネット検索サービスの問題。多くのサービスは世界中のサイトをクロールし、最適化してストレージサーバーに保存している。アメリカではフェアユースによる除外規定でセーフとされている。一方日本の著作権法では除外規定は私的複製や引用の様に、厳格に限定列挙で規定している。よって、現在の法律ではNG。
 Google日本法人、Yahoo JAPANについても海外にサーバを置いている現状。遮断された場合のリスク、一社による情報のコントロールのリスク。Google八分(グローバルな八分、中国の検閲などローカル八分)は問題。
(質問・コメント)これは事実誤認。日本人による国外犯として摘発可能。しかし、それが行われないのは、著作権法のほうがおかしい(現実に対応できていない)からだ。

第20回「著作者は著作権をどのように捉えているか」

概要

デジタルコンテンツがインターネット上を豊富に流通し、通信と放送の融合が進められる今こそ、著作権の扱いについて、根本に戻って考え直す必要があるだろう。
この再考の過程では、著作物を創造するという重要な役割を担う、著作者が何をインセンティブとして創作に取り組んでいるかを知ることが不可欠である。そこで、今回は作家の三田誠広氏をお招きし、そのお考えを伺うことにした。


スピーカー:三田誠広(作家・日本文藝家協会副理事長・著作権問題を考える創作者団体協議会議長)
モデレーター:山田肇(ICPF事務局長・東洋大学教授)
日時:7月24日(火)18:30~20:30
場所:東洋大学・白山校舎・2号館16階スカイホール 東京都文京区白山5-28-20
入場料:2000円

レポート

ICPF第20回セミナー「著作者は著作権をどのように捉えているか」要旨
講師: 作家・三田誠広氏

1. 著作権はどのようにして生まれたのか

 諸説あるが、18世紀頭、イギリスでアン王女が複製権は著作権者にある、といったのが始まりといわれる。それまでは原稿買取制だった。買取制は「よいものを書けば版元が高く買い取ってくれる仕組み」で、それなり合理的な制度だった。それをアン王女が「複製権は著作権者にある」と変えた。さらに、新聞連載後に書籍として出版する、貸し本業を営む、など書籍の利用形態が広がっていき、著作権の範囲が拡大していった。

2. 小説家とは何か

 私がここで話すのは、川端康成、谷崎潤一郎などの芸術家、一行書くのも「てにをは」の一文字にも注意する。出版社の人々と議論を行い、誤植があってはいけないと神経を注ぎ、装丁家や挿絵画家とも協力して、総合芸術として著作物を作り出していく。それが小説家である。
 小説家にとっての、著作のインセンティブは本が出ることであり、レスペクト(尊敬)されること。尊敬され続けるためには、著作物が流通し続けることが重要。そのためには、出版社が経済的利益を確保できるように、しなければならない。小説家は執筆までを担当し、その後のリスクは出版社が全部背負っているのだから。
 小説家としては、同一性保持権が重要。自分の作品に無断で手が入り、変質していくのは許されないことだ。

3. 著作者の権利を制限すること

 著作権には権利制限の規定がある。公共の利益を考えて合理的というのであれば、著作者の権利は制限される。入試問題への利用、教育での利用、障害者による利用。
 このような権利制限は正しいことだ。日本文芸家協会としても、三田氏個人としても協力してきた。
 デジタルコンテンツの流通を促進するために権利制限が必要だという主張も、考える価値があることだ。しかしそれはだれか(たとえば経団連)が勝手に決めるものではない。制作者と利用者が話し合い、折り合いを付けられるところを探すという、努力があってしかるべき。

4. 著作権管理団体の価値

 小説家は、労働者ではなく著作物を創る業者。業者がカルテルを作るのは、独占禁止法上問題かもしれない。
 しかし、それによって利用者は多くの利益を得ている。たとえば一括許諾、申し込んだら直ぐに許諾をだすように定められている。それによってトランザクションの手間が軽減される。
 文藝家協会は利用料を安くしようと努めている。視覚障害者のための音訳図書(朗読図書)について、図書館が行うものについても、処理を簡略化した。音訳図書のネット配信も認めている。

5. 著作権保護期間の延長

 ヨーロッパでEUが誕生したとき、お互いの国内法を調整しようとなった。それでヨーロッパは70年に合意した。それに続いて、アメリカをはじめ、アルゼンチン、エクアドルなどの南アメリカの国々がEUに合わせる形で延長した。
 ベルヌ条約加盟国158カ国中、70年は69カ国だが、価値の高いコンテンツを生み出しているヨーロッパ、アメリカ、南米は70年。だから(三田氏の世界観・価値観では)世界標準は70年。
 日本の川端康成や谷崎潤一郎だけが50年というのはおかしい。文芸家協会に登録している小説家で、年間100万円以上、印税収入があるのは100人以上、その半数はすでに亡くなっている。その中には後10年で、1000万円以上の収入が切れる人々もいる。
 最初に言ったように、儲かるか、儲からないかの賭をしている出版社の期待に反するのも、間違ったことだ。

6. 著作権保護期間延長で困る事例への対応

 明治時代のもうぼろぼろになった本をデジタル写真にとって複製する。そんなことができない。デジタルなのにネット配信できない。現状でも権利処理を行えば利用できるが、有名でない人々の権利処理はむずかしい(著者がいつ死んだかわからないし、遺族がどこにいるかもわからない)。権利者不明著作物をもっと自由に使える仕組みも必要である。
 権利者不明著作物については裁定制度がある。著作者を探す相当の努力をした上で、供託金を支払うことで利用できる。しかしこれは大変な手間であり、私は裁定制度の簡略化を提案している。
 これからの時代は利用を促進しなくてはならない。ハードルをなるべく低くしなくてはならない。
 50年以内の作家でも全く流通していない、という場合、その本をデジタルアーカイブ化することはご遺族も喜ばれるだろう、青空文庫に公開するのを推奨する仕組みがあってもよい。
 そうした意思表示のシステムを作って、利用を促進していくための仕組み作りを、著作者側が行ってもよいと思っている。17団体共同で共通データベースを作っているのもそれだ。ただ、全部の著作物を登録するというのは、手間もかかるし、ベルヌ条約脱退が前提となる。

質疑応答

質問:50年を70年にのばすのは印税などの金銭的インセンティブではなく、版元が本をし続けるのが重要だと言ったのか?
回答:自分が死んだらどうなるかはわからないから、金銭はインセンティブではない。
質問:「本になること」が重要か?「読まれること」が重要?
回答:「ネット公開をどう考えるか」にもつながる質問だと思う。私は古い作家なので、編集者と協力者し、一冊の本を作る、という総合芸術に参加していることが歓びである。

質問:今は死後50年が原則だが、創作したい人がたくさんいる、保護期間が50年でも創作のインセンティブがあるのに、伸ばすことがインセンティブになるか?今以上にインセンティブを増やす必要があるのか?
回答:リスペクトの問題だ。生きている間に評価される人もいるし、死んだ後も評価される人もいる。推理小説ならともかく、純文学の分野のように、死んだ後に評価されると幻想を抱いてやっている人々だっている。その人たちの幻想を守る期間は長いほうがよい。
質問:流通業者は、ある程度の利益が見込めないと出版できないという。20代、30代の作家の場合、100年くらい投下資本回収の期間があるのに、出版できないというのか?
回答:そもそも、出版契約は長くて5年なので、著作者には関係ない。出版社側の、復刻を出すか出さないかの問題だと思う。
質問:世界が100年になれば100年に合わせるのか
回答:その場合、日本も合わせるべきと思う。

質問:DRM(デジタル著作権管理)がしっかりしてきたとき、作家はどう対応するか?
回答:小説家は書籍が売れて、図書館等に残される、ということを前提としている。ネットに公開することは、無料で公開する、ということではないだろうか。コピーガードも信頼できない。
質問:では本が売れてコピーガードもできれば認めるか?
回答:それは出版社の問題だ。

質問:出版社を中抜きして直接売れる状況ではどう考えるのか?
回答:私のホームページでは、コピー不可で日記を掲載している。ネットは利益をあげるものではないと考えている。著作者としてはコピーガードは意味がない。

質問:銀河鉄道の権利が切れていないときには、権利者(宮沢賢治の遺族)が拒否すれば、松本氏は銀河鉄道999を作れていない。そんな世界をあなたは望むか?
回答:利用したいものは、誠意を持って遺族を説得するしかない。

質問:誰もが著作者となる時代では、著作者の中での文藝家協会の割合は低い。著作者たちの総意かどうか分からない延長を支持するのか?
回答:確かに誰もが発信できる時代だ、しかしそこで発信されるものは「情報」であり、我々の発表している「文化」は違った尺度で測るべきだと思う。
 同人誌は知り合いでしか流通しないが、それを出版社が採用すれば賞をもらえる可能性がある。そこには出版社の背負ったリスクがある。音楽でいえばオーディションや先行投資。そうやって投資した中で、わずかが売れる。ブログのように売れるかどうかも分からない情報を発信する、というものと並列に語るのはどうかと思う。

質問:クリエイティブコモンズについてはどうか?
回答:いちいち記号つけるのは面倒だ。一個一個につけるのでなくて、サイトに集約する形で載せるべきとデータベース化を進めている。協会に登録している人は二年くらいでデータベース化できる。
 ただ書籍すべてをデータベース化することは不可能。ハウツー本など、権利者がすぐ不明になる本もたくさんあるので、意思表示している人だけの権利を守るでいいのではないかと思う。
質問:今あるコンテンツポータルの音楽関連のデータベースは、精度が高いとは言えない。JASRACが80年掛けてあの程度の精度。それなのに、二年で文藝家協会のデータベース化が出来ると言える根拠は?
回答:二年で出来るとは思わないが、この話は70年の延長問題はセットなので二年といった。裁定制度によるフォローを行う上ではデータベースが必要だろう。
質問:意思表示はベルヌ条約の無方式主義とバッティングすると思われるが?
回答:ベルヌ条約を侵すのはダメだ。しかし、裁定制度を柔軟に運用できる仕組みは可能だ。登録制度という言葉を使うとベルヌ条約的にアウトと思うので、裁定制度の「相当の努力」を拡大解釈して実質的利用を行うようにしていくべきだ。

第21回「オンライン社会における著作権のあり方」

概要

 デジタルコンテンツがインターネット上を豊富に流通し、通信と放送の融合が進められる今こそ、著作権の扱いについて、根本に戻って考え直す必要があるだろう。
 今回は、インターネットに関する法的課題について積極的に意見・提言を発せられている白田秀彰氏をお招きし、オンライン社会の秩序と法、とりわけ著作権のあり方について、そのお考えを伺うことにした。

スピーカー:
 白田秀彰(法政大学社会学部准教授)
モデレーター:
 山田肇(ICPF事務局長・東洋大学教授)
日時:
 8月30日(木)18:30~20:30
場所:
 東洋大学・白山校舎・5号館5202教室 
 東京都文京区白山5-28-20

入場料:
 2000円

レポート

「私論 知的財産(著作権)戦略」

1.  現行著作権は賞味期限切れである。著作権に関するいくつかの論文をネットにアップしてきた。なかでも三つの論文をぜひ読んで欲しい。
●「ほんとうの知的財産戦略について
●「ほんとうの創作者利益について
●「もう一つの著作権の話

2. ほんとうの創作者利益は自ら生み出した作品が広く世に知られ、その上で公正な評価を受けることである。そのためには、創作に必要な設備、材料、資料の便宜を受けられること、創造的な人をそだてる教育環境が整備されること、作品が広く「受け手」に届き、評価を受ける環境が整備されること、言論表現の自由が守られることが重要。情報が自由にかつ安価に流通する環境は、「創作者の利益」を増大することに貢献こそすれ、阻害することはない。

3. 著作権制度の根幹は「排他的独占権」。そもそも公共財である情報について、権利者を設定し、市場における作品の流通量を制御する権能を付与するもの。 これによって希少性が生じ、情報から経済的利益を獲得しうる。メディア企業は、仮にそれが存在しなかったならは、膨大となる情報流通にかかる費用を縮減することによって、存在意義をもち得た。

4. 著作権制度を基礎とし、複製物を市場で販売することによって、創作者は自らの作品を広く世に問う機会を獲得し、メディア企業は媒体販売で経済的利益を得ることになった。メディア企業は、コンテンツ(商品としてパッケージ化された情報)を生み出し、市場において販売する場合のボトルネックであることを著作権制度によって保障された。それは、他の流通手段が存在しない環境下においては、もっとも費用のすくない合理的な制度だった。

5. 電気通信技術の発達によって、創作者個人であっても、広く安価に創作物を複製、配布、流通することが可能になった。メディア企業は旧来の収益ポイントを守るため、変化に抵抗する。技術革新の果実を自らで獲得するため、創作者や利用者が使用可能な技術を制約しようとする。複製物作成・流通がボトルネックとならなくなったので、作品に対する独占権である著作権を強化することで、コンテンツの流通制御力を維持しようとする。この二点についての創作者・利用者とメディア企業の対立が現在の著作権問題の本質である。メディア企業は「創作者の権利」を隠れ蓑にする。

6. インターネット環境において、メディア企業の利益(=ボトルネック維持)と、創作者の利益(=情報の自由流通)は対立し、それらが結合している必然性もなくなったのであるから、それぞれ分離して合目的的に対処することで、現在の錯綜した議論を整理し、望ましい次世代の制度を構想することができる。

7. 二階建て案を提案する。その概要は次の通り。一階部分、すなわち文化目的の作品はベルヌ・ミニマム+労働法的保護。二階部分、すなわち商業目的の作品は経済的利益を最大化しうる制度。複製物の流通制御ではなく、作品そのものの価値を経済的利益に変換する。

8. 一階部分は(仮称)創作者権法である。現行著作権法から、隣接権に関する規定を除外し、創作者本人の利益と権利の保護を明確に打ち出す。ベルヌ条約の最低保護要件に加えて、次のような規定を設ける。権利の復帰制度/権利の譲渡契約の無効。最低著作物使用料率(最低印税率)の法定。出荷数・流通数統計の事業者・政府への整備義務付。継続的提供の権利/義務。訴訟手続の警告前置義務。二次的創作に関するルール明確化。GPL やCC のような柔軟な権利主張方式の法定化。

9. 二階部分は(仮称)制作組合法/知財法人法である。商業作品に関わる各主体(含 隣接権者)が、市場の仕組みを活用して、その経済的利益を最大化し、適切に経済的利益の配分がされることを目的とする。現在、商業作品制作においてみられる、「制作委員会」方式を法定化し促進する。あるいは作品そのものに法人格を与えて、株式会社と類似の運用を行う。さらに受益証券を売買する市場を創出することで、商業作品制作の資金調達・リスク分散・利益配分を市場機構を用いて行う。この場合、 取引の客体を確定する必要から登録が必須となる。

10. 創設されるのは、制度利用者の申請に応じて与えられる国の制度上の恩典であって、権利ではないことを明確に示す。恩典の内容は、制度利用再申請時に新内容へと変更されうる。すなわち、国の産業政策としての自由を確保する。制度利用においては、登録更新を続ける限り、国の恩典付与が続くものとする。登録および更新においては、一定の登録手数料、更新手数料を支払うものとする。

11.  登録によって作品が確定しその内容が公示されるので、商業目的(制度利用者の市場における収益回収可能性に否定的影響を与える)での無断複製のうち、デッド・コピーについては、非親告罪として捜査機関が摘発を行うものとする。登録によって公示されるので、商業目的での無断複製その他の侵害行為についての訴訟において、侵害者(被告)が制度利用者(原告)の作品を参照したこと、その存在を知っていたことを擬制しうる。それゆえ、訴訟において、原告は、被告作品が原告作品に「客観的に類似している」ことを立証するのみで侵害が認められるとする。すなわち、侵害がないことの立証責任が被告に移転する。

12. 登録作品の経済的利益の侵害については、原告に有利な損害賠償額の推定がなされ、被告は実際の損害額を立証しなければ、推定損害賠償額を支払うこととする。このため、被告は侵害の実態について自白する動機を持つことになる。登録作品は、「資産」として課税評価の対象となる。登録作品の収益からの配当利益については、税制上の優遇措置を講ずる。

13. 投資者保護のために、制度利用主体である組合あるいは理事会は、収益機会を最大化する管理者責任を負う。収益機会を最大化する義務の反射的効果として、作品を構成する個々の要素の創作者たちの同意の上で、個々の要素ごとに著作者人格権を行使しないものとする。作品についての排他的権利を盾に、他者の事業機会・創作機会を妨害することは、知的財産政策に反するのみならず、その作品の収益機会を減ずる行為でもある。ゆえに、作品の使用について協議が整わない場合、組合あるいは理事会は、法律の定める率料による一般使用許諾手続きに同意するものとする。

14. 作品の市場価値、収益可能性を低下させる様態でのデッド・コピーを除く利用形態の場合(例 悪意のあるパロディ等)、利益侵害として民事訴訟を提起することができる。その場合、市場価値や収益可能性の低下についての立証責任は原告(制度利用者)にある。

15. 作品を登録した後、χ年毎の登録更新をしない場合は、恩典は停止され、作品は公的領域のものとなる。 登録には登録手数料、更新にも更新手数料が必要であり、それらの料金は政策的に変更しうるものとする。登録によって作品にはID が付与される。組合あるいは理事会の決議によって利益配当割合が決定され、受益証券が子ID を付与されて発行される。これは、オンラインでの受益証券取引の便宜のためである。受益権は、受益証券として市場で売買されるが、創作物の現物投資、あるいは労働による労働投資の場合、売買不能の受益権留保分を、創作者保護の目的のために設定しうる。

16. 総まとめ。自由流通により今までの利益ポイントが無くなり、メディア企業と創作者の利害が一致しない。二階建てにして、二階部分を著作権法の制約から自由なスキームで市場化することが望まれる。

<質疑応答など>

1. 実演家は救われるべきでは? → 実演家が専ら創作物の伝達に寄与するという現行法の考え方では、実演家は隣接権の枠で扱われる。これをそのまま受けて二階部分での保護を提案したが、実演家が自然人であることに着目すれば、労働法的要素の強い一階部分に組み入れるべきかもしれない。さらに検討したい。

2. 登録を促進させるためにはなんらかのクリティカルマスが必要では? もう少し、緩やかな制度でいいのではないか? → 現状でも登録するインセンティブはあるように思う。特許のように、訴えられるリスクに対して登録するインセンティブを作ればよい。

3. 放送事業者が逐一登録するのは手間では? → 数百万人はいるだろう、個々の複製物使用者の行為について、監視制御しうる電子的著作権管理が技術的に可能であるといわれる。そうならば、その技術を応用して事業者の著作物を迅速簡易に登録処理しうるだろう。

4. 二階にいつでもいけるとすれば、かつて一階部分にあった時に既に流通してしまっているコンテンツについての保護はどうなるのか? → この点についての検討が十分でなかった。二階部分は、大きな費用がかかる商業作品を作る事業を保護するものだから、登録物は商用パッケージ状態を想定している。たとえば音楽で、インディーズからメジャーに行く場合、過去の楽曲も、商用品質で再度リマスタリングなどをするのではないか。

5. 製作委員会方式、SPCや有限責任会社などの取り組みは既に行われていて、ある程度成功している。わざわざ二階部分にする意味は? → それらの仕組みをより商用コンテンツ制作に適合的なものとして制度化しようという提案だ。コンテンツ制作を中心に考えれば、現在の仕組みでは、著作権の否定的な制約が作用し、かつ望まれる規定を欠いている点も多いと考える。

6. アメリカで、特許について買い上げ制度が提案されている。エイズの予防薬などへの対応としてWHOでも議論されている。その場合の問題は、くだらない特許ばかり買い上げてくれと言われそうなところ。 → 人々の意見を取り入れて具体性のある案にしたい。

7. そもそも二階建て制度の著作物は、外国ではどのように保護されることになるのか。 → 二階部分の保護は、ベルヌ条約準拠の一階部分の保護に追加される制度的恩典であるから、それらの作品は、当然に著作物として各国において内国民待遇で保護される。

8. 今の制度はおかしいと、WIPOで声を上げてもよいのではないか。エイズ特効薬などに関わる特許については途上国が文句を言っている。なぜ日本は、著作権制度はおかしいとWIPOで言わないのだろう。 → そのとおりだ。情報技術と知的財産に依存して立国する国家戦略に適合的な制度変更を主張すること自体に何らの問題もないはずだ。

第22回「通信・放送の総合的な法体系を目指して」

概要

総務省では「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」を組織し、通信法制と放送法制の統合について研究を深めています。この新しい法体系によって通信と放送の融合が促進されるかどうかについて、世の中には賛否両方の意見が存在します。
 そこで情報通信政策フォーラム(ICPF)では、今回から数回連続して月次セミナーでこの新しい法体系について議論を深めていくことにしました。
 今回はその第一回として「研究会」の事務局を担当されている総務省の鈴木茂樹課長をお招きして、総務省の考え方をうかがうことになりました。

<スピーカー>
 鈴木茂樹(総務省情報通信政策局総合政策課長)

<モデレーター>
 山田肇(ICPF事務局長・東洋大学教授) 

<日時>
 10月25日(木)18:30~20:30

<場所>
 東洋大学・白山校舎・5号館5201教室
 東京都文京区白山5-28-20 

<入場料>
 2000円

レポート

ICPF第22回セミナー「通信・放送の総合的な法体系を目指して」要旨
講師: 総務省情報通信政策局総合政策課長 鈴木茂樹氏

2007年10月25日に開催された第22回セミナーでは、総務省の鈴木茂樹課長に「通信・放送の総合的な法体系を目指して」と題して講演をいただいた。講演および質疑応答の主要部分は次の通りである。

1. 新しい法体系を提案する理由

 情報と通信の融合がこのところ急速に進んだ。2001年に宮内提案が頓挫したことがあるが、そのころとは状況が大きく違う。少子高齢化で縮小しつつある日本で情報通信がいっそう発展し、国民がその利便を享受し、また情報通信産業が国際競争力を強化していくため、新しい法体系を提案することになった。
 この間の技術の進歩は急激で、技術的には通信と放送の融合は実現できる状況にある。ラジオ局がインターネットにも番組を同時に送信したい、と考えたとしても、今は総務省に申請が必要だ。そんな手間をできる限り減らし、より自由にビジネスができるようにしたい。
 国際競争力に関しては、日本のメディア系企業の中に世界トップ10には入れるような企業が出てくることが、目標である。外資規制が緩和してきたので、外資が日本企業を買収する例が出て来ている。それと逆に日本企業が海外で活躍してくれるようになれば、と考えている。
 アメリカはこうしているとか、ヨーロッパにはこんな動きがあるといって、それを受け入れる時代ではない。ブロードバンドでも携帯でも世界的に見て進んだ状況にある日本において、世界で最も進んだ法体系を作っていきたい。

2. 事業者や国会の理解は得られるのか

 今のビジネスモデルを続けていくだけでは、明るい未来が展望できないことに事業者は気づき始めている。新しい法体系から生まれる可能性に対して事業者の理解が深まれば、受け入れられていくと思う。
 通信と放送の産業では、状況は刻々と変わってきているのだ。放送に持ち株会社制度を入れるといった、制度変更を進めようとしており、環境変化の積み重ねで理解を得るようにしていきたい。
 しかし、最終的には立法を決めるのは国会であり、以前と国会の状況は異なるので新しい法体系が成立するかどうかは、何とも言えない。総務省としては、06年の骨太の方針に沿って、07年末までに研究会の報告、その後、審議会への諮問、09年に法律案の準備、10年に国会提出というスケジュールで進んでいきたい。

3. レイヤー型法体系の要点

 伝送インフラ、プラットフォーム、コンテンツとレイヤーごとに、必要最小限の規制を行う。たとえば伝送レイヤーを提供するものは、それを通信と放送に利用するというようにしていく。
 それぞれのレイヤーで支配的な地位にある事業者があれば、それに対しては必要な公正競争上の規制を行う。またレイヤー間をつないでいくときにボトルネックになる事業者がいるのであれば、それにも必要な規制を行うことになる。プラットフォーム機能を持つ事業者が顧客リスト、課金情報、セキュリティを握って、それにコンテンツやアプリケーションの提供者が不可欠に依存するというようなものがボトルネック事業者の例になる。それらの事業者以外に対しては、規制はできる限り緩和したい。
 (コンテンツ提供者に対する規制はアマゾンや楽天にも及ぶのかという質問に対して)今はよくわからないが、できる限り自由なビジネスを妨げないというのが原則である。

4. コンテンツに対する規制に関する危惧について

 法執行機関は、たとえば「児童ポルノは見つけ次第、ネットワークから遮断すべし」というようにきびしい規制を要求するところがある。しかし総務省としては「通信の秘密」を守らなくてはならない。違法な情報を提供するものは刑法などで取り締まることが出来る。違法とはいえないが有害な情報に対してプロバイダーがどのように対応するか、といったことについて、プロバイダー責任法などを参考に共通ルールの必要性を検討するという内容になっている。

5. 通信には国境がないことについて

 国内だけに閉じた規制ですまないことは承知している。プラットフォームやコンテンツには国際的な広がりがある。だからOECDなどさまざまな国際的な場、あるいは二国間協議を通じて、整合した国際ルールを作っていく必要がある。
 その場合には、わが国から新しい法体系を提案して、それへの国際的な理解を深めていくという方向で動きたい。
 現実のビジネスの中では、他国の事業者が国外で日本向けに有害サイトを提供する例がある。そんなときにはその国との協力が必要になる。そんな例を積み上げていくうちに、国際的な合意が生まれてくると考えている。
 また、外国の事業者が日本でビジネスをするときには、日本のルールを守ってもらう。外国の事業者だから通信の秘密はどうでもよいなどということには絶対にならない。

6. その他

 (著作権法の改正が必要になるのではないかとの意見に対して)本当に著作権法の修正が必要なのか、それとも著作権関連事業者のビジネス慣行の修正が必要なのか。後者のほうが、現実には問題と認識している。
 (利用者には障害者や高齢者もいる。それらの人の中には、インターネット配信の映像には字幕がないなど困っている人がいるとの意見に対して)パブリックコメントでも出てこなかった。たしかにこれから考えていくべき課題であろう。

第23回「通信・放送の総合的な法体系に対する放送事業者の考え方」

概要

 総務省では「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」を組織し、通信法制と放送法制の統合について研究を深めています。この新しい法体系によって通信と放送の融合が促進されるかどうかについて、世の中には賛否両方の意見が存在します。
 情報通信政策フォーラム(ICPF)では月次セミナーでこの新しい法体系について議論を深めていくことにし、10月にはその第1回として「研究会」の事務局を担当されている総務省の鈴木茂樹課長をお招きしました。
 連続セミナーの第2回目は、TBSメディア総合研究所の前川英樹社長をお招きし、放送事業者の考え方を伺います。


<スピーカー>
 前川英樹(TBSメディア総合研究所社長)

<モデレーター>
 山田肇(ICPF事務局長・東洋大学教授)

<日時>
 11月26日(月)19:00~21:00

<場所>
 東洋大学・白山校舎・6号館6216教室
 東京都文京区白山5-28-20

<入場料>
 2000円

第23回セミナー講師 TBSメディア総合研究所社長の前川英樹氏が、セミナーの感想をTBS総研のウェブサイトに公開しました。

レポート

 講師にTBSメディア総合研究所社長 前川 英樹氏をお招きし、「通信・放送の総合的な法体系に対する放送事業者の考え方」と題して講演と議論が行われた。

総合的な法体系が議論の俎上に上った理由

 今、なぜ総合法体系が様々な議論の対象になっているのか。現状の法制度は複雑でテレビ局はネット系の事業がやりにくい、ベンチャー型ビジネスにとっては参入の絶好の機会、政府与党合意というお墨付きがある、「法体系を総合的に見直す」というのは官僚にとって千載一遇のチャンスといったいろいろな理由があるだろう。
 それを認識した上で、今日は次のような論点で話をする。

・ 「コンテンツ適合性審査」が与える影響、所有規制と行為規制のバランス
・ オールIPと地上デジタルの関係
・ 有害情報と法制のレイヤー化
・ 産業政策としての総合法体系 など

 この議論には情報通信審議会と在り方懇(竹中懇)の二つの流れがある。多少語弊があるかもしれないが、情報通信審議会は従来手法(制度化されている審議機関)による行政主導型。在り方懇は政治主導。以前にもハードソフト分離論があったが、在り方懇は一つの集大成であった。
 在り方懇の報告書を振り返ると、前提としてソフトパワーの重要性が高まり、また日本はインフラも世界最高水準となった。よってその上を流通するコンテンツとブロードバンド・モバイル・テレビを活かしていくという認識がある。それが法制度のレイヤー議論へとつながっていく。
 報告書の骨格として、放送には事業自由度の拡大、通信は公正競争の促進という二つの軸がある。その上で、具体的には融合市場拡大の環境整備、伝送路の多様化に対応した包括的著作権規定、技術標準の在り方、NHK・NTTの技術研究の在り方の見直し、IP化のメリットの享受(規制硬直性の見直し)などが、提案されている。
 放送におけるテーマは、経営の在り方については、マスメディア集中排除原則緩和、事業の垂直統合容認、メディアコングロマリットの形成。インフラでは、未利用周波数に役務利用法適用、周波数の有効利用、NHKの伝送部門の分離。放送コンテンツに関しては、公正なコンテンツ取引市場、NHKの娯楽・スポーツの分離など。ここから、総合的に法体系を見直すべき、という考え方が出てきた。
 この報告書の要点が政府与党合意となったが、そこでは「レイヤー型」という表記はない。しかしこれを受けてスタートした「総合的法体系」の研究会では、レイヤー型法制度しかないだろうという暗黙の認識があったように思える。それ以外の可能性は論議していない。民放連はこれについてレイヤー型に転換する具体的な利点や意義は見いだせない旨意見を表明した。
 そこでも指摘されているが、「表現の自由」や「通信の秘密」といった憲法との関係から見直すことが重要だと考える。法体系の検討として基本理念は本質的な問題だ。中間とのまとめでは、理念と個別の法との関係が曖昧。(前川註:法的には「表現の自由」や「通信の秘密」は憲法で保障された公理のようなものだが、社会的にはそれがその時代にどのような意味を持ち、どのように機能しているか常にレビューする必要がある。)

メディア規制の状況感覚

 法というのは成立したその時から現実的な力を持つ。作る時点での力学(理想・利害・思惑)と、法が働き出したときの実際の力とは差異がある。
 放送免許における適合性審査についてみれば、番組編集基準について審査されるとすると、それは言論規制などの面からもいかがなものかと思う。総務省の担当者や研究会の委員はそうした言論規制に関与するつもりはないと言うが、その担保があるわけではなく、「つもりはない」ということで制度を考えるかのは間違いだ。電波が国家資源・公共の財産である以上、許認可は必要。それは確かだが、一方では放送という言論機関をどう規制するかという面で見たときに、現在の電波法・放送法という二層構造による間接規制は優れた知恵だと思う。優れた規制はそのまま利用した方がいいのではないか。
 私は放送・通信は新たなサービス領域の登場など、融合はありうると考えている。しかし、そこを産業論として考えるのではなく、メディアの問題として考えることが大事。放送というのは国家と放送の共存関係として国民・市民の共通の意識空間を形成し、同時性・同報性を持つ。インターネットは分散・トランスナショナル型で国家からの遠心力が働く。であれば、全部をインターネットが代替するわけにはいかない。今あるハード免許と所有規制の合理性を国家から崩す意味があるのだろうか。
 情報は媒体を選択し、媒体は情報を規定する。特に、パッケージ(固体)型の情報よりもライブ(液体)型の情報のほうが、メディアによって性質が変わっていく。たとえば会話をするにしても、メールと電話では表現が違い、意味の伝わり方も違う。媒体によってメッセージも変化するという、メディア論的な観点が大切である。
 メディア論(メディアとメッセージの関係)で見ると、私はレイヤー規制という考えに賛同しない。メディア論の観点から見れば、中間報告にあるコンテンツ規制の概念は曖昧で、明確化が必要だろう。中間とりまとめはあり方懇から引き継いでいる産業政策が基本にある。メディア論的論点から政策立案をすることは出来ないが、政策から何が欠落しているかを指摘することは重要。
 オールIPと放送を比較した場合、現在の技術とコストの関係からオールIPでは放送のように同一情報を同時に全世帯へ配信することは難しいのではないか。一方、TS伝送の地上デジタルテレビのネットワークインフラはほぼ構築されつつある。放送局経営がどうなるかは別だが、放送インフラは、当分維持される。その意味でオールIPという考え方で、放送も含んだ法体系を考えること自体に無理がある。
 ネット上の情報規制については「安心・安全」という観点から、ゾーニング規制が検討されている。生活感覚から言えば出会い系、自殺志願サイト、犯罪誘発情報など、危ないというものがあるので、それ自体を規制することは受け入れられるだろう。しかし、「ネットワーク上の情報を規制する」という論点は重要で、定義から慎重に議論すべきである。
 「安心・安全」という考え方は、それ自体の中に完全性を求める働きがある。デジタル情報がすべてデータベース化されようとしている状況で、「安全・安心」の完全性を追究すると全ての情報管理という問題に行き着く。これは危険ではないか。通信には本来匿名性があるのに、これが否定されることにならないか。

中括りの法制度の可能性

 法技術の観点も大切。大括りだとレイヤーだが、中括りだと何か?という議論はしたのか。現状で話を最初にまで戻ることは期待できないが、そういった議論が足りていない気がする。
 また、レイヤー型法制度では基幹メディアという定義が難しい。地域免許というものがあるが、地方は経営が大変で、地方民放テレビ127社すべてが幸せに生きていけるとは思わない。むしろローカルにおいてはテレビ局とCATVの関係を見直しても良いのではないか。今テレビ局がCATVを経営支配すること制度上は出来ないが、その見直しやあるいは地域系新聞社との関係をどうするかなど、ローカルには全国メディアとは違う規制のあり方があっても良い。もちろん言論の多様性を確保するという問題はあるが、
 IPTVはなぜテレビの再送信なのか。IPTVが独自のコンテンツ流通ネットワークになることは賛成。各社とも様々なビジネストライを行っている。ネットに対してテレビ局が放送コンテンツを抱えこんでいるわけではない。現状では投下する商品に対する経済的なメリットがとれないのだ。二次流通のための商品化(著作権処理のコストと労力)と収入が見合わない。いまは、ビジネススキームがどうすれば成立するかの段階。お金になればもちろん拡大する。現状でTVは一次流通が最大限の利益源と考えており、それを最優先している。ネットでも見たいという人がいるのもわかる、それは供給と受給の関係で成立していくものだ。再送信は、それとは別の話。インフラができたから他人のコンテンツを出すべし、というのは乱暴な話ではないか。
 放送局のネットビジネスについては、権利処理が容易でなく、なかなか採算性のとれるビジネスにならない。どんどん出したいし、eコマースやモバイル分野などでもビジネスチャンスをねらっているが、現状ではジョイントベンチャーなどにより開発中。

デジタル流通の著作権について

 著作権について、ブログなどで自由な表現を目指す人々の中には、著作権保護は表現の自由を阻害している、無償で使うことが一般化することで市場は活発化するのではないかという考え方が出てきている。もしコンテンツ市場を活性化するならば、権利保護よりコピーフリーという主張もでてくるのではないか。あたらしいメディア行為やビジネス開発がドンドン出てくる時代だからこそ、著作権とは何かを改めてキチンと考えて議論すべきで、放送局もその議論に参加することが必要。

ここまで述べてきた幾つかの問題は、総合的法体系が出来るまで待っているものでなく、個別にどんどん検討していくものと考える。

通信と放送の関係(まとめ)
 総合的法体系の問題を考えていくと、幾つかの大きな論点にぶつかる。
放送と通信の関係は入れ子関係ではないだろうか。TVはインターネットを取り込むことで情報社会のポジションを確保するし、インターネットはテレビを環境として受け入れることで将来を選択する。融合とは、その入れ子構造が成長していくことだと考えている。
 ネット社会の拡張で、コミュニケーションのあり方が変化したことは間違いない。そうした技術変化は、産業を製造型から情報型にシフトさせつつある、これもそういう流れ。
その中で放送には、権力からの自由(異議申し立て)、共通の意識空間の形といった機能がある。インターネットには、個人としての情報発信と情報消費の面で経験したことのない大きな変化に遭遇している。
 そうした変化と関連して、ネット上の知的行為(著作権のあり方)について、贈与型行動と創作行為の関係も問われてくるだろう。また、情報管理とデータベース化の関係から、果たして安心安全という観点でどこまでネット上の情報規制がありうるか。

 総合的な法体系といっても、これらすべてに責任を持つということにはならない。むしろ、総合的法体系の議論が問題提起して、なおかつ法体系の中では見えてこない問題を考えることが、メディア全体を考えるために重要。研究会から最終報告が出ても、議論はそれで終わりではない。

質疑応答

(質問)TVではなくYouTube等しか見ない若者をどう見る?またこれらのサービスに対する総合法制の在り方についてどう考えるか。
→ TVからみるとまず権利侵害があるが、新しいコミュニケーションツールとしてみると、今まで無かったから大勢の人たちがおもしろがっているのだと思う。少し質問の趣旨と外れるが、この質問で一番思うのは、こうしたことを日常化している若者がTV局や新聞社に就職してくると、TV局であれ新聞社であれ、そういう感覚でブログを扱うようにTVや新聞に接するのではないかなと思う。制度面でなく、意識面で融合している世代がくる、この辺りがメディアに与える影響については、良い悪いでなく今後考えるべきことだと思う。
 YouTube等は社会的に相当の影響力を持っていると思うし、そういう時代のTVの役割をとらえ直す時期に来ている。また、今はとらえ直すべき状況にあるという認識が大事。総合法制との関係だが、こういったサービスはどういう政策であろうとも成長するものは成長するだろう。規制の問題ではないとも思う。

(質問)ネットで見ると、ニコニコ動画と第二日本テレビは違うけれど、ワンセグで見たときに、テレビ局のコンテンツとauやソフトバンクの番組との差別がつかない状況。これをどう考えるか?
→ 今のままかは別として、たぶんその通りになると思う。それが法体系のレイヤー化とかみ合っているかは、私にはわからない。

(質問)水平分離、レイヤー化は私どもが申し上げてきた。その立場から見ると、前川氏は法律を過大評価しすぎてはいやしないかと思う。個人情報保護法のようなざる法を改正せずに使い続けているが、情報は0か1のビット列でしかないので、個人情報は識別可能というのは難しい。ウィルス作成罪も成立すれば同様にざる法になる。取り締まりは、事後的には可能。事前規制は出来ないかと思う。法の実行力を過大評価しなくてもいいのではないか。
→ 総合的法体系の影響を過大評価しているわけではない。法律としての力の問題と同時に、法律外に波及していくこと、その影響を考えている。法律というのは、ざる法も悪法もまた法、一度できてしまうと実態として機能してしまう。
 ただ、コンテンツ審査基準、ここについてだけは過大ではなく問題視している。

(質問)メディアの機能として申し上げられた「異議申し立て」(言論の自由の主張)についてだが、これを市民運動としてやる健全な組織が日本に無いことの方が問題としてとらえた方のがよいのではないか。本当に言論の自由を主張するならば、徹頭徹尾戦うべきだ。メディアもいるけど、メディア以外にもNPOがいるのではないか。
→ 同意する。NPOではないがネット上にはそんな動きも出てきている(荻上チキさんのいうカウンターカスケード)。これらはマスメディアと違う形の情報伝達の場として成立しているように思う。正に、法体系の外の話。

(質問)10%も自社で作らない地方局が地方的に根ざした番組の提供、というのは嘘だと思うし、一日に1千万円しか使えないのではそもそも無理。県域免許でなく、道州制的なアプローチが必要ではないか。
→ ほぼそう考えるが、放送だけ現状で県単位を撤廃できるかは難しい。「地方の時代映像祭」に参加する番組のように、一年に一本程度かもしれないが、地方局でしか出来ない優れた番組も存在する。それ排除してしまってはいけない。

(質問)オールIPで県域免許をなくすことについて、どう考えるか
→ 地上波のネットワークとの関係。地方局として、何かメリットか。各ローカルが、全国発信する方がメリットだという考え方が強まれば、地域免許は自分たちを縛るからいらないとなるだろう。しかし、仮にIPで独自にやるとして他県の事業者と組むにしても、本当に自分たちで自立出来るかという見通しが立たないと難しいのではないか。キー局が圧力を掛けているわけではない。

(質問)ネット滞在時間が増えればTVの同時性・同報性の価値が薄れるのでは?
→ だからこそ、二次流通問題はテレビ局にとっても重要。テレビの媒体価値という点では、対策を更地で一から考えるのではない。50年続けてきたテレビ局のDNAとして、マスメディァとしてライブ機能をどう高めていくか、という点がTVのあり方の原点だろうとも思う。スポーツの生放送、事件の生中継などがそれ。

(質問)YouTube等に見られるように、編成権が視聴者に移っていくのではないか
→ 編成権が移るというより、選ぶ人々の選択肢が増えるということ。どこかで、TV局がターゲットを定めて編成する意味を失い、コンテンツプロバイダになるタイミングが来るかもしれないが、今はそうではないだろう。
 確かにBBCのようにコンテンツプロバイダになっている例もあるが、BBCは国から強制的に、CBSは買収されてそうなったということ。日本のテレビ局は現状ではそうならない。ただし、キー局であっても自社で100%番組制作しているわけではない。人材という自社の経営資源をどこに投下するかはきわめて重要な問題となってくる。制作会社との関係について、公正・正常な関係を継続的に築くことによって、制作会社の制作力を強めることも大切。

(質問)先ほどのBBCやCBSにはならないといったが、日本の放送局の非効率性はどうするのか。しかし非効率性によって利益を守っている側面もあるとすれば、レイヤー型による効率化によってダウンサイジンズする可能性はあるのでは。
→ 率直に言えば、放送が情報産業全体の成長について考えているかと言えば、考えているわけではない。放送がどう大きくなるかは考えるが。レイヤー法制化に放送を含めるのはどうか、持ち株会社の導入のほうが放送事業のパイは拡大するだろう。

(質問)では、産業政策として考えたときにレイヤー型だと産業規模が拡大するといえるのか?
→ あり方懇はそういっているが、それがそうなのかはわからない。事業の垂直統合の容認と規制のレイヤー化の関係は不透明。

最後に、「総合的法体系は何が目的なのか? これは「情報法」を作ろうとしていると考えるべきだ」という発言が参加者からあった。今回の報告書は、通信と放送の話と考えるべきではない。憲法21条からも考えるべき。二者の対立軸ではなく、今回の話は情報法をつくる考えと考えた方がいいだろうというもの。

第24回「通信・放送の総合的な法体系に対する通信事業者の考え方」

概要

 総務省では「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」を組織し、通信法制と放送法制の統合について研究を深めてきました。この新しい法体系によって通信と放送の融合が促進されるかどうかについては、世の中には賛否両方の意見が存在します。
 情報通信政策フォーラム(ICPF)では月次セミナーでこの新しい法体系について議論を深めていくことにし、07年10月には「研究会」事務局を担当された総務省の鈴木茂樹課長を、11月にはTBSメディア総合研究所の前川英樹社長をお招きし、それぞれのお考えを伺いました。
 今回は連続セミナーの第3回目として、ソフトバンクBBの筒井多圭志取締役にお話をしていただくことになりました。

<スピーカー>
 筒井多圭志氏(ソフトバンクBB取締役CTO)

<モデレーター>
 山田肇(ICPF事務局長・東洋大学教授)

<日時>
 1月31日(木)18:30~20:30

<場所>
 東洋大学・白山校舎・5号館5201教室
 東京都文京区白山5-28-20

<入場料>
 2000円

レポート

 総務省では「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」を組織し、通信法制と放送法制の統合について研究を深めてきた。情報通信政策フォーラム(ICPF)では月次セミナーでこの新しい法体系について議論を深めてきたが、今回はソフトバンクBBの筒井多圭志取締役にお話いただいた。

講演の要旨:

 総合的な法体系を、産業組織論やゲーム理論で考える。産業組織論の立場からすれば、競争こそが重要で、たとえばWiMAXの免許が一社となるのはおかしなものだ。有効競争基準がしっかりし、市場参入が容易な状況を作り出す必要がある。
 指定電気通信事業者の規定では「円滑な提供に支障が生ずるおそれ」という部分に問題。円滑とは何かについて、恣意的な判断の危険がある。ゲーム理論を適用しようにも、ゲームをしようにも、そもそもゲームに参加できないというのはおかしい。コンテスタブルなマーケットではないということだ。
 FTTHにも問題がある。8分岐に関わる現状の規制は、経営的に対応が難しい。だから参入できない。コンテスタブルなマーケットでなくなっている。産業組織論の見地から見れば総務省は十把一絡げにドミナント規制にしたいとしているようだ。そこには問題があるように思う。8分岐は構造的な参入障壁で、電力会社とNTTだけという状況になっている。
 ボトルネック性についてもっと考えるべき。エンドユーザー相手の商売、NGN等でずっと議論されている。NGNでは「ZC接続」の機能が必要。それがないと接続業者はサービスが提供できない。
 まとめであるが、エッセンシャルファシリティ法理、産業組織論を理解した上でみていただきたい、ということだ。

討論:

山田(モデレータ):
 筒井さんは重要な指摘をしてくれた。総合的な法体系の研究では、レイヤー規制という考えが示されているが、市場競争については、報告書はふれていない。今日の話では通信事業者の競争が主だが、放送事業者と通信事業者の競争というのもあるだろう。

コンテスタビリティについて:
(質問) コンテスタビリティという言葉についてもう少し整理されていないと話題が通じないのでは? 8分岐がなければコンテスタブルになるという風に聞こえるが? → (筒井)シングルならばコンテスタブルと考える。
(質問) コンテスタビリティを振りかざすのは、古いのではないか? 通信の場合、アンバンドルでコンテスタブルにするようにやったわけだが、すべて失敗したわけだが? → (筒井)間のロジックを明確にしないで、最初と最後だけを短絡的につなげて失敗したというのはおかしい。
(コメント) 日本は世界的には珍しい成功例だ。確かに日本はソフトバンクががんばってうまくいったけど日本以外では成功例はほとんどないヨーロッパでも成功例はない。

FTTHの8分岐について:
(質問) 8分岐でOLT直上のスイッチを解放すれば競争がうまれるとみているのか? → (筒井)みている。
(質問)規制と実装をどう切り分けるのか?確かに完全に自由をすれば競争は発生するが、最初に技術投資をしたところが不利になる。そもそも、その技術評価方法自体が間違っているのではないか? ぶっちゃけていえば、行政がそこまでマイクロマネジメントする必要がないのでは? → (筒井)そこはまさに今、答申がかかっているところ。そこで真剣に議論する必要がある。
(質問)NTTの人も、光ファイバーがだめかもと思っている節がある。赤字ビジネスにくっつく意味は? ベライゾンも実質的に赤、AT&Tも最初からやる気なくてラストワンマイルはメタル、一から引くなら光でもいいかもしれないが、ソフトバンクはvDSLでやるほうが格好いいのでは? → (筒井)光への投資は確かに非効率。ただし儲かっていないというのは償却をどう計算するかの問題で、実際には赤にならない試算はある。別紙の資料を参照してほしい。

NGNのZC接続について:
(質問)NGNはIPなんだからZCの概念がないのでは? → (筒井)IPであっても接続できなければ競争できない。
(質問)“ソフト”バンクがここまでハードに肩入れするのは? → (筒井)苦手だががんばるという会社。これは移動体でも同様。

周波数配分について:
(質問)TVにあんなに周波数がいるか? 設計としてはガードインターバルの問題だ。数十メガヘルツは節約できる。ソフトバンクがそのコストを負担するとすれば? → (筒井)とても良いアイディアだと思う。放送局のスペック変更だけでできそうだが、社内でデューデリして回答したい。